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全盲のイラストレーター ◆エム ナマエ◆ の超個人的十七文字ブログです
ボクは中途失明した画家。週に三度の人工透析で生かされています。なのに、今でも 画家で作家。ボクは思います。人生、何があっても大丈夫。
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Author:emunamae
いつも日記をつけてます。失明したら頭脳がノート。
だから、記憶力のトレーニングのためにも、前日の出来事を振り返り、コツコツ日記をつけてます。



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2010年5月17日~23日
0517・月・
 5時より目覚めてパソコンに集注。絵本の原案やテキストに没頭する。空気が乾いているので、晴天でも暑苦しくない。まさに高原の環境である。だが、太陽が高くなると向かいの建物の工事が激しくなり、かまびすしさのあまり、せっかくの美しい空気を窓でシャットアウトしなければならなくなる。季節のいい時期の工事はやめてもらいたい。
 透析に向かうため、コボちゃんと駐車場へいくと、またまたナマゴミが駐車場に積み上げてある。コボちゃんは怒ってカラスよけのネットとナマゴミを移動する。この近辺の住人の常識とは、こういうことなのだ。自分の周囲の環境さえ満足できれば、関係のない人間がいかに不快でも、それは考えに入っていないのである。コボちゃん、そろそろ公(おおやけ)に抗議しようと考え始めた。個人の意識が変わらない限り、沖縄問題も解決しない。
 いつもの透析で、夕方のニュースあれこれ。人間の幼児の間では手足口病(てあしくちびょう)が流行っている。家畜の間では口蹄疫(こうていえき)が流行っている。どちらもウィルスが病原体。なんとなく症状も似ている。関係はないのだろうが、どうもウィルスというやつはどんどん変化し、進化していく。これはボクの理解だが、生き物は常にウィルスとの競争と共存により進化してきたのではないだろうか。
 昼ねができなかったせいか、1時間ほど熟睡してしまう。目覚めると、NHKラジオでは『世の中おもしろ研究所』。新しい副所長が真面目で、面白くない。やはり青木裕子アナウンサーのとっちらかった反応がよかったのだ。でも、今夜は気ニナルジンのゲストがとっちらかっていたので愉快だった。
 NHKラジオ寄席、「真打競演」はしっかりと聴く。柳家三三(さんざ)は『松山鏡』(まつやまかがみ)。珍しい演題だが、ボクは最近、この根多を立て続けに聴いている。ひとり足りなくなった東京ボーイズは頑張っていて、いい味を出している。取りの落語は九代目の三笑亭可楽(さんしょうていからく)。ボクは先代可楽の大ファンである。あまり素人受けはしないのだが、一度はまると、抜けられない魅力を持っている。当代(とうだい)可楽(からく)は、そのお弟子。先代の語り口をしっかりと引き継いでいるので、安心して聴いていられる。出し物は『こうふい』。甲府と豆腐をかけている演題である。先代可楽のこの根多を、いつも録音で聴いているので、当代の腕前がよく見える。山椒は小粒でぴりりと辛い。これが三笑亭可楽(さんしょうていからく)の名前の由来であると聞く。初代可楽が稲荷町(いなりちょう)で寄席を開いたのが、東京の街に寄席が流行する切っ掛けになったとのことである。
 駐車場からの帰り道、関(せき)夫妻とハチ君に遭遇。アルルとハチ君がご挨拶。一緒に関の御宅まで歩く。関は慶應義塾志木高校の同期生。彼は高校生のときから、ここに住んでいるという。でも、彼は新潟の人間なのだ。運命とはいえ、ボクも豊かな家庭に生まれたかった。関ご夫妻からアルルに沢山の果物をいただく。ハチ君は15歳のアメリカンコッカースパニエルで、本日が誕生日だったのだ。それが嬉しいのか、アルルと一緒によく歩いていた。関宅からの帰り道、ボクはアルルとふたりで歩く。家までは一直線の道路だが、アルルはときどき匂いは取るものの、きっちりと盲導犬をやっていた。
 日本酒をちびちびやりながら、ラジオ深夜便の藤沢周平作品朗読に傾聴。ときどき、この江戸の風景に、どれだけの信憑性があるのか考える。けれども、人間の暮らしはそんなに変わってはいないのだろう。
 久しぶり、太宰治の『とかとんとん』を聴いて眠る。軽快な語り口なので、安眠できるのだ。作家には色々な顔がある。
▲ ゴミたちが騒ぎ始める夏の朝 

0518・火・
 7時に目覚め、コーヒータイム。有線放送の落語をBGMにマッサージチェア。足元ではキジバトポッポがのびのびと豆をついばんだり、水を飲んだり、歩いたりしている。部屋の仕切りはすべて解放してあり、いい風が吹き込んでくる。
 最近の有線放送の落語チャンネルは様変わりをした。けれども、以前のように名人の録音も流している。興味深いのが今の咄家(はなしか)さんや落語家さんの芸やトークだ。自宅が寄席になったみたいで愉快である。
 ではあるが、向かいの工事の騒音だけがボクをイライラさせている。いつまで工事をやっているのだろう。無駄口ばかりしているから仕事がはかどらないのだろうと思う。
 夕方までパソコンに集注。帰宅したコボちゃんとアルルとで豪徳寺まで歩く。イタリアン居酒屋「フィレンツェ」の店先で青木裕子アナウンサーと望月税理士に遭遇。店内に連れていってもらう。アルルは当然のように自分も一緒だと思っていたらしく、かなり失望したらしい。いくら、らしくできるとはいえ、アルルは本物の盲導犬ではないのだ。レストランが入れてくれるわけがない。
 18時半、豪徳寺フィレンツェで軽井沢朗読館反省会。参加者は望月税理士ご夫妻、元絵門ゆう子マネージャーの秋山さん、NHKで技術者をしているフリーの太宰麻帆(だざいまほ)さんとボクが青木裕子アナウンサーを囲んで集まる。
 最初はまともな反省会だったが、アルコールの血中濃度が上昇する度にグズグズとなっていく。そんな中で、NHK技術の太宰さんとの会話が愉快だった。あのおもしろ研究所も、木曜日の山本しんや監督の芸能番組「我が人生に乾杯」などを手がけていると聞き、ボクなりの番組に対する意見を披露させていただく。
 青木アナウンサーが評価しているだけあって、太宰さんは有能で魅力ある人材だった。おまけに、彼女の妹さんは女優のように美しいモデルさんであるという。太宰麻帆(だざいまほ)さんも、長身で美人という噂だ。何よりも嬉しいのは、音響技術者として、エム ナマエの歌声を評価してくださることだ。下手糞な歌ではあるが、これまで様々な音響技術者に歌声を褒められてきた。おそらく、電線を通すと、ボクの声は変質するのかもしれない。
 5時間飲み続け、お開きとする。太宰麻帆さんと熱く抱擁してサヨナラする。ボクは青木アナウンサーのタクシーで家まで送り届けてもらった。
 これは後日に聞いた話だが、他のメンバーは酒を飲まない真弓さんを除いて、居酒屋で2時まで飲み続けたとかで、翌日は再起不能状態だったらしい。
▲ 反省会飲み過ぎてまた反省し

0519・水・
 いつもの時刻に目覚めるが、なんとなく気分がよくない。二日酔いになるほどは飲んでいないのだが、胃袋が弱っているのかもしれない。どこからきているのかは不明だが、疲労があちらこちらに残っていて、ここのところ、筋力運動もサボっている。
 朝、コボちゃんが熊本の高級蜂蜜でハニートーストを作ってくれたが、それを食べたらたちまち満腹となった。
 今朝もバナナを一口かじる。毎朝の日とかじりだが、一口にバナナといっても、同じ味ではないのだ。
 ブラックコーヒーで頭が冴えるかというと、そうでもない。起きたときから、コーヒーの刺激くらいでは立ち直れないほど頭が重いのだ。
 柳家小三治(やなぎやこさんじ)師匠にいただいた藤沢周平作品をBGMにマッサージチェアにかかる。このCDは小三治(こさんじ)師匠自ら朗読をされている貴重なもので、小三治(こさんじ)師匠が語ると、本当の江戸の空気が流れるような気がするから不思議だ。
 いつもの弁当が届くが、食欲がない。本日のメニューは好物なのだが、食べられる気がしない。パソコンに向かい、ルーティーンワークをするのが精一杯。とはいえ、どこかが苦しいとか痛い、とかではない。病気というのでもない。だって、そもそもボクは病気という船に乗っての旅人であるからだ。
 点在しているテキストのかけらを眺めたり、捏ね合わせたり(こねあわせたり)、混ぜ合わせたり。(まぜあわせたり)そこへメモられたアイデアを点滴(てんてき)したり。でも、そう簡単に作品は生まれない。少し焦っている。
 源氏物語のお知らせ配信は、隔月連続公演 第六回 第六帖 「末摘花」(すえつむはな)の巻。昨年8月から始まった女優、山下智子さんの京ことばの語りによる源氏物語の会も、来月で6回目である。ホームページとブログへのアップを絵夢助人さんにお願いする。いつものメンバーにはBCC配信をする。
 すると、日本福祉大学の生江明(なまえあきら)教授に届かない。気になって電話をするが、留守電になっている。で、幼馴染で(おさななじみ)、生江明(なまえあきら)との共通の友人、「いせや」の山下に電話をする。もう、ハワイのホリデイから戻ってきていた。彼はハワイフリークで、お店を休むこともあるから、自分は不良商店(ふりょうしょうてん)だといって笑う。不良少年(ふりょうしょうねん)ではない。どうやら生江明ご夫妻に変わったことはないらしい。ハワイ土産(みやげ)を渡したいから、明日あたりくるという。
 激しい雨音がして、窓を閉める。ずっと晴天続きだったので、心地よいシャワーである。乾燥した空気にも少し飽きたかもしれない。
 いつもの透析のBGMはテレビとラジオの報道番組だが、どれもつまらないニュースばかり。鳩山の名前も声も聞きたくない。本当にガッカリさせられた。口蹄疫(こうていえき)対策でも政権は機能していない様子。まだ試験運転中なのは理解できるが、渦中(かちゅう)の農家はたまったものではない。
 それにしても、なんたる不始末。十数万頭(じゅうすうまんとう)の家畜が食べられることなく無駄に殺処分させられるのである。そもそも家畜に頼り過ぎている。口蹄疫(こうていえき)や狂牛病(きょうぎゅうびょう)。こうした緊急事の前で考えるのは、人智は自然の前では無力である、ということだ。そもそも自然の摂理に背いた(そむいた)浅知恵が新しい病原体を誕生させているような気がしてならない。家畜に仕立てられ、ただ利用されるためだけに命を奪われていく生き物こそいい迷惑だ。
 人間が牛を食べる。この食生活はどこから発信されたものだろう。閉じ込められた環境での食肉家畜生産には限界があるような気がする。ここで再び捕鯨(ほげい)を考える必要があるのではなかろうか。
 熟睡して目覚めたら、野球が面白いことになっていた。強い者が勝てるとは限らないのが勝負の面白さである。
 帰宅してビールを一杯。気分は戻っていた。ひさびさ、菊池寛(きくちかん)を聴く。疲れた頭に名文を楽しむ余裕はない。たちまち眠りに落ちていた。
▲ 雨音に釣られて閉めるガラス窓

0520・木・
 朝から雨が降っている。楽しみにしていた散歩ができず、ボクもアルルもガッカリしている。仕方がないので、パソコンデスクでルーティーンワーク。
 つまらない。絵本テキストをあれこれするが、どうしてもブラインドコーナーが曲がれず、向こう側が見えてこない。
 頭が痺れた(しびれた)のでベッドに潜ると熟睡。目覚めても雨。天気予報と違うじゃん、と文句をいいたくなる。
 菊池寛の『恩讐の彼方』(おんしゅうのかなた)の朗読をしっかりと聴きながらマッサージチェアにかかる。すると、コボちゃんも聴いている。思わず引き込まれたといっている。菊池寛だよ、というと、
「やっぱり名文だと思ったわ」
といっている。
 午後はコボちゃん特製のタンタンメンでブランチ。閉店してしまった中華料理店「王味」(わんみー)直伝のタンタンメンで、これはどこへいっても食べられないスペシャルメニュー。コボちゃんなど、スープを最後まで飲み尽くす。
 雨の日のいいのは静かなこと。向かいの工事も休んでいて安堵する。とにかく、いつまでもグズグズやっていて、無駄口ばかりだから、永遠に終わらないような気がしている。迷惑な話である。遊歩道に面した建物、といえば、分かる人もおられるかもしれない。
 雨天のせいだろうか。前向きな気持ちが生まれてこない。というか、最近は筋力運動もサボっているし、仕事もはかどらない。どこかに疲れのような何かが堆積していて、それがボクをブラックホールに引きずり込む。こうした場合はすべてを忘れて眠るに限る。というわけで、夜まで布団の中。
 途中、起き上がろうとするが、まるで体が動かない。一年に何度か、こうした状態になることがある。要するに本能の命ずるままになること。それがいちばんだ。
 作家のマキコさんの電話で起こされる。愛犬ジョイを訓練しているアリーナドッグスクールの神田訓練士の話題だった。彼こそはマキコ夫妻の救い主(すくいぬし)であるというのだ。これはボクの確信だが、神田訓練士はいずれ日本一の訓練士になるであろう人物である。
 石和(いさわ)図書館とメールで打ち合わせ。アルルを館内に入れてくれるという。石和温泉(いさわおんせん)にはワンちゃんと泊まれる温泉旅館があるので、この夏の展覧会と講演が楽しみである。
 パソコンに集注していたら、「いせや」の山下から電話。ハワイ土産(みやげ)を届けにくるという。雨の夜だが、高田馬場から経堂まではクルマで30分である。
 現れた山下のプレゼントはハワイ最高のコーヒー豆、pea-berry(ピーベリー)。全体の豆の、たった2パーセントしか取れないという貴重品。その名称は、豆の小粒さに由来しているらしい。珍しいのが、コーヒー豆をチョコレートでくるんだスウィーツ。ボクは勝手にコーヒービーンズチョコと呼ぶことにした。そして「いせや」名物、花林糖饅頭(かりんとうまんじゅう)。米油(こめあぶら)でからりと揚げた饅頭が香ばしくて旨い。この商品は必ず売り切れるのだが、ボクらのために運んできてくれたのだ。これらをお茶菓子にコーヒーを楽しむ。その間、運動不測を持て余しているアルルとミミがテーブルの周囲をじゃれ合いながら走り回っていた。
 不景気が続いてはいるが、巷には本物志向が舞い戻ってきている。「いせや」の和菓子はその空気を満足させるに充分な品物である。これからますます忙しくなっていくだろう。
 ずっと雨だったので、運動不測。筋力運動をしていたら、木村裕一氏から電話があり、本日から明日へ向かって長電話をしてしまう。久しぶり、ボクら共通の人類の敵の話題となり、盛り上がる。愉快だった。
 コボちゃんと最上級の梅酒と、シングルモルトウィスキーのオンザロックを楽しむ。肴はハワイのコーヒービーンズチョコである。これがウィスキーにピッタリなのだ。コボちゃんは飲みながら心臓のペースメーカーの勉強をしていて、ボクも耳学問をする。
 ベッドに入って再び菊池寛の世界に浸る(ひたる)。昼寝をしたせいだろう。ねむりに落ちたのは午前3時。
▲ 雨空に嘆息してる犬と猫

0521・金・
 6時よりルーティーンワーク。コボちゃんはキジバトポッポを窓辺に解放してから出勤。おかげで部屋も全面解放。
 東京都心で30度を超えて、今年初めての真夏日を記録する。向かいの工事はまだ終わらないので、風通しはよくっても、騒音ばかりは防げない。盲人にとって何より不愉快なのが騒音雑音。都会では音楽さえも雑音になってしまうのではあるが。
 北朝鮮の魚雷攻撃が話題になっている。どうもあの国、ずっと戦争ごっこを続けているとしか思えない。だから、国際的なスタンダードに協調するつもりなど毛頭ないのである。それでも世界はこの国と共生しようと説得する。どれだけ譲歩しても、本物の戦争よりはましなのだ。
 日本の金星調査船「暁」(あかつき)が無事軌道に乗る。金星の衛星軌道から惑星表面を観測する予定。2年間の観測で、地球の未来を予測できるようなデータを得られるだろうか。急速な温暖化が地球を現在の金星のような惑星に変化させる可能性があるとすれば大変だ。
 二酸化炭素の温室効果というものを知ったのは宮沢賢治の童話『グスコーブドリの伝記』と、NHK特別番組の惑星特集であった。番組によれば、金星表面は460度以上。気圧も100気圧あるという。やっぱり地球は奇跡の惑星なのである。そして、この奇跡の源泉こそは「いのち」(いのち)であるのだ。
 ドアチャイムが鳴って、ポストマンがくる。差出人に覚えはあったが、念のためにアルルを呼び、ボクと一緒にドアから顔を出してもらう。マンマル目玉とはいえ、真っ黒な大型犬である。用心棒の役目くらいはできるのだ。郵便物は金の星社から絵本『あしたのねこ』の増刷版だった。ポストに入らなかったのである。ポストマン、ありがとう。
 パソコンに集注。BGMはYMO。窓の外の工事の音に負けないよう、ボリュームを上げてやる。
 透析の支度をしながらデイキャッチを聴く。宮台真司先生、愛について語っている。宮台先生のロジックは愛というメンタルな問題も、クリアに解析する。痛快である。
 パソコンを閉じる寸前、メールが1本。秋の講演依頼である。もちろんOKの返信をする。
 帰宅したコボちゃんとカルピスを飲む。真夏日のカルピスはやっぱり美味。そのままいつもの透析に向かう。
 プロ野球の交流戦は面白いことになっている。強いチームが強いのでは面白くないのである。おかげで上方演芸会で思い切り笑うことができた。とはいえ、透析のベッドだから、声を殺してはいるが。あはは。
 帰宅したら、TBSラジオ「DIG」のテーマは喫煙。ボクは5年前に完全断煙に成功してはいるが、喫煙者にどうしても味方をしてしまう。
 金曜のラジオ深夜便は大阪発。ラジオエッセイは大阪民博(みんぱく)の広瀬浩二郎(ひろせこうじろう)準教授。昨年、この人の暗闇講演を聴いて以来、ファンになってしまった。今夜の彼は「笑害者」(しょうがいしゃ)を提唱。障害者ではない、笑害者である。今後はボクもこの単語を使わせていただく。笑害者はまさにボクの生き方でもあるからだ。
 今夜もシングルモルトウィスキーのボウモアとハワイのコーヒービーンズチョコを楽しんでから眠る。BGMは夏目漱石の『草枕』。本日が今年初めての真夏日であった事実とは関係がない。
▲ 真夏日に窓開(ひら)けない金属音

0522・土・
 目覚めてすぐ、ポケットラジオでテレビ音声を聴く。TBSテレビ、下村健一のサタズバレポートだ。すっかり風邪の治ったらしいケンちゃんが力強く語っていた。今朝のテーマは重たい。我が子を病気にさせて、それを看病して「良き母」を演じたいという症候群がある。ナントカという精神疾患だが、この症状によると思われる児童の死亡例がいくつも報告されている。テーマになった事案(じあん)は最近の裁判員裁判では懲役10年の判決が出ているが、犠牲者の命は奪われた。発見のひとつのきっかけは、母親を離すと、たちまち児童の症状が軽減されることからだという。今回の事件は入院中の監視カメラによって暴かれたが、一般的に発見は困難だという。
 と、ここまで下村健一レポートを聴いていつも思うことはケンちゃんの語り口のクリアさだ。そのケンちゃんと頭の悪いボクが20年の付き合いになるのだから、世の中は不思議で満ちている。
 ブラックコーヒーを楽しみながらパソコンに向かい、ルーティーンワーク。土曜ワイドでインタビュー中のラッキー池田が写真を撮られたらしい。そのときのラッキーさんのセリフが
「ニッコリニコニコ、ニシニッコリ」
とはお洒落。こいつはボクも使ってみたい。なんて考えながら筋力運動。
 昨夜のラジオ深夜便でラジオエッセイを語っていた大阪民博(みんぱく)の広瀬浩二郎(ひろせこうじろう)準教授にメールする。昨年のキッドアイラック・アートホールで彼による暗闇講演に参加して、すっかりファンになってしまったのだ。日本点字図書館の田中理事長に無理にお願いして、彼のアドレスは教えてもらってあった。彼の提唱する「笑害者」(しょうがいしゃ)という概念をボクも広めていきたい。
 ニコニコキッチン弁当でランチ。メニューを配達員の青年に読んでもらった。ここのメンバー、みんな気持ちよく働いている。
 ランチタイムのBGMはまたまた土曜ワイド。永さんの番組のゲストはいつも面白い。
 着替えをしてマンション入り口でコボちゃんと待ち合わせ。夏日の太陽の下、駐車場まで歩く。コボちゃんにクルマでキッドアイラック・アートホールまで連れていってもらい、地下のブックカフェ「塊多(かいた)」のテーブルまで誘導してもらう。
 ブラックコーヒーを飲んでいたら、絵本を勉強中の若い女性が現れる。星屑(ほしくず)朗読会のあることを知って駆けつけてくれたのである。一緒にコーヒーをしながら画材や技法の話に夢中になる。そこへ『詩とメルヘン』の詩人、わすれなぐさこと、平岡淳子さんと詩村茜(うたむらあかね)さんが挨拶にきてくれた。
 15時、キッドアイラック・アートホールで星屑(ほしくず)朗読会。予想を外れて満員である。ステージにはキッドアイラック・アートホールと信濃デッサン館、ムゴン館のボス、窪島誠一郎(くぼしませいいちろう)。先生は村山塊多(むらやまかいた)とやなせたかしについて、熱く語った。早世(そうせい)した天才画家村山塊多の亡くなる一週間前に、やなせ先生がこの世に生まれたのである。そして、塊多もやなせたかしも、優れた詩人で愛の画家。この共通点が故の「やなせたかしと村山塊多展」なのである。本日の朗読会は、このレクチャーだけで参加した価値がある。
 ステージでは平岡淳子さんと詩村茜(うたむらあかね)さんの詩の朗読。窪島先生がおっしゃるように、作品はこちらが語り掛けなければ、何も応えてはくれない。そのつもりで素人の朗読を聴く。ふたつのまるで違う個性の共演ではあったが、朗読フリークのボクがどう感じたかは内緒。それでも、やなせ先生が選出した詩であるから、いくつかはボクの心に届いた。特に茜さんの詩と朗読はボクの美学と共鳴した。
 最後は歌。このギター伴奏がキッドの守り神、坂本明浩さんの演奏なのである。かっこいいギターテクニックであった。鳴らされているのは1960年のビンテージ、名器ギブソンであった。
 村山塊多とやなせたかしの原画の並ぶギャラリーでパーティー。やなせたかし作品はすべて、この展覧会のためのかき下ろしである。91歳の先生が、超多忙の中で制作した原画なのである。
 特製のアンパンマンの形をしたアンパンが作られてあった。餡子だけで800グラム使ってあるという。
 窪島先生から奥様とご子息を紹介される。そして、11月の暗黒対談に共演者として招かれた。これは名誉ではあるが、ボクに可能かどうかはまこと不安。
 若い画家さんと話が弾む。パステルを使用しているらしいが、この画材の難しさをどこまで把握しているかが疑問。そこを語り合う。
 少女時代、名古屋でのエム ナマエ展覧会にボクのサインをもらいに、病気と闘いながら長距離バスできてくれたという女性と会話する。この人は詩人を目指しているという。厳しい時代だが、こんな時代だからこそ、本物が現れてくるだろう。
 ホール入り口のベンチでコボちゃんの迎えを待っていたら、窪島先生の奥様とワンちゃんに気がつく。トイプードルのモモちゃんと話をしながら、奥様と会話する。あまりに過分なお言葉に恐縮しきり。ボクは奥様に、窪島誠一郎は日本一かっこいい男だと思うとお伝えした。
 坂本明浩さんとギター談義をしていたら、地下の打ち上げに誘われる。打ち上げの乾杯で久保島先生の発声は
「遠ざかる今日の後姿に乾杯」
 この人って、どこまでカッコイイのだろう。ボクはすっかり参っている。窪島先生と馬鹿話をしていたらコボちゃんとアルルが現れた。窪島先生はアルルを偽盲導犬と呼んでいたが、本当に偽物だと知って驚いていた。要するにボクを偽画家といっているのと同じく、先生得意のブラックユーモアだったのだ。
 キッドではアルルは盲導犬と思われていたのだろうか。いや、そんなはずはない。坂本さんにはただの犬と伝えてあったはずだから。
 帰宅途中、あちらこちらのスーパーで酒の肴を調達。家でちびりちびりと日本酒をやる。BGMはNHKラジオ文芸館。作品は宮本輝の『バケツの底』。再放送ではあるが、ボクの最も好きな世界である。
 ラジオ深夜便のゲストは福岡伸一教授。ひさびさ、命の動的平衡(どうてきへいこう)の論理を堪能。おかげで、かなりいい気持ちになって眠る。
▲ 書くことは愛の伝導と見つけたり

0523・日・
 早起きして雨が降らないうちに散歩をするつもりになっていた。けれども、コボちゃんが起きない。そこでラジオはNHK。久しぶり、当世キーワードを聴くが、あまり心に残らない。最近、少しは世の中が見えてくるのではないか、というようなアプローチに不足があるような気がしている。以前ほど魅力を感じないのだ。
 腕時計のアラームが鳴ったので、文化放送に回す。6時からは文化放送では志の輔ラジオ『落語でデート』。若くて純朴な青森出身の女優と志の輔の噛み合わない会話の面白さ。これぞ巧まざるユーモア。思わずゲラゲラと声を出して笑ってしまう。それにしても、蝦蟇(がま)の油売りの口上をジャパネット高田とはこの若き女優に脱帽。彼女、松元リオというらしい。松元いよ、ではないのだ。27歳。で、落語は三代目春風亭柳好(りゅうこう)の『蝦蟇(がま)の油売りは27歳の彼女にはちんぷんかんぷんだったらしい。まあ、無理もない。しかし、名人三代目柳好(りゅうこう)はいいなあ。こんな気持ちのいい蝦蟇(がま)の油は、そうざらにはないだろう。
 コボちゃんといざ散歩に外出というタイミングで雨が落ちてくる。楽しみにしていた散歩は今日も雨に阻止される。
 昨日もご一緒させていただいた窪島誠一郎先生のお父上、水上勉の『雁(がん)の寺』の朗読CDをBGMにマッサージチェアにかかる。コボちゃんも聞き耳を立てている。このCDは以前購入したものだったが、内容がお寺の修行物語とばかり思っていて、後回しになっていたのだ。けれども、水上勉作品の朗読CDは我が家にこれだけなので、今を代表する作家のひとりである窪島誠一郎のお父上の作品に浸りたく(ひたりたく)なった、というわけなのだ。
 もちろん、作品の冒頭には修行中の小僧が出てくる。けれども、この作品がいかなる展開を見せるのかは、だんだんに見えなくなってくる。
 CD3枚組みの1枚分はマッサージチェアにかかって聴いたので、背中がほぐれ、だんだんに眠くなる。2枚目はベッドで聴いたのだが、面白くて今度は頭が冴えてくる。ついつい夢中になり、とうとう最後の3枚目まで聴いて衝撃。こんな結末になるとは。まさか夢にも思わなかった。驚愕のエンディングではあるが、やはり大作家の筆である。張り巡らされた複線が想像力を掻き立てるから、このエンディングの以外さに驚かされるわけなのだ。
 なんとなく文学めいてきて、今度は夏目漱石の『二百十日』をかける。橋詰勲(はしづめいさお)の朗読だからたまらない。面白くて仕方がないのだが、腕時計のアラームが鳴ったので、NHKラジオを点ける(つける)。
 NHKラジオでは昼のニュースと素人喉自慢の時間なのである。散歩ができなかったので、室内徒歩をしながら聴く。それにしても、最近の喉自慢の審査員は、みんな音痴になったらしい。本日のチャレンジャーでも、ボクから見るといちばんリズムもメロディーもはずれていた少女がチャンピオンになったからだ。最近のNHK、何か勘違いをして、妙に若者に媚び(こびて)ていていやらしい。
 しばらくパソコンに向かっていたら、やっと眠くなる。夕方目覚めると、本日最初の食事はコボちゃん特製ネギラーメン。これはオリジナル。胡麻油で炒めたネギの甘さと海苔の香りが絡まりあい、スープに深みを与えている。これは我が家のメニューに加えていい一品。
 しばらくパソコンに向かってから、またまた夏目漱石を聴きたくなる。ベッドに引っくり返って聴いていたら、いつの間にか眠っていた。慌てて起きて、パソコンに向かう。
 週末のラジオ深夜便のニュースは水野貞彦(みずのさだひこ)アナウンサー。ボクはこの人のラジオ深夜便が好きだったので、ニュース読みだけでは勿体ないと思う。
 大阪民博(みんぱく)の広瀬準教授からご丁寧な返信をいただいて感激。またまた熱きメールを送信してしまう。広瀬さんとは面白いことになるかもしれない。
 コボちゃんと麦焼酎で作った甘くない梅酒をオンザロックでちびちびやる。未明、窓を開くと雨がしとしと降っていた。キジバトポッポは鳥篭でひっそりとしている。本日はずっと雨が続いている。九州では猛烈な雨だそうだから、明日もひどく降るのだろう。
▲ 降り続く雨のリズムは子守唄



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