全盲のイラストレーター ◆エム ナマエ◆ の超個人的十七文字ブログです
ボクは中途失明した画家。週に三度の人工透析で生かされています。なのに、今でも 画家で作家。ボクは思います。人生、何があっても大丈夫。
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Author:emunamae
いつも日記をつけてます。失明したら頭脳がノート。
だから、記憶力のトレーニングのためにも、前日の出来事を振り返り、コツコツ日記をつけてます。



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2016年8月22日~28日
☆人工透析を導入したとき、東大のドクターはボクの余命を5年と宣告したけれど、ボクはそれから30年も生きています。お医者は神様ではありませんので、もしも余命を宣告されたら、どうかご自分の生きようとするエネルギーを、もっと信頼してあげてください。さて、この日誌は透析患者が病人ではなく、機械に腎臓の代わりをしてもらっているだけで、普段は一般の人と何ら変わらなく暮らしていることを知っていただくためのものでもあります。また、この日誌には本当のことも書かれていますが、ごくまれには嘘や冗談も書かれています。ただし、嘘は嘘らしく書かれてありますので、その判断のできないお子様たちは、どうか常識のある大人と一緒にご覧ください。また、難易度に関係なく、熟語や固有名詞などの漢字に振り仮名をしていることもありますが、これは視覚障碍者のための音声ガイドをサポートするためのもので、決して皆様がこの漢字を読めないと思っているわけではございませんので、その点はなにとぞご容赦ください。

0822・月・

 日本のメダルが41個とは本当にスゴかったと思う。けど、今朝の場合はオリンピックどころじゃないんとちゃうか。台風が接近してんだから。東京にどんどん近づいてくるんだから。んだからNHKさん、その台風のことをもっと詳しく教えてくださらんかね。台風情報をもっとコマメにやってくださらんかね。これから北軽井沢に出かけるかどうか、決心しなきゃならないんだから。台風と競争すべきかどうか、ここが判断の分かれ道なんだから。そうなんです。途中で洪水に見舞われたり土砂崩れに遭遇したくはありませんからね。
 結局、台風9号との競争となる。予想より上陸がどんどん遅くなり、雨中を夢中で走っていたらやがて静かになり、雨にも風にもやられずに軽井沢へ無事到着。軽井沢のスーパーなスーパーマーケット、ツルヤで買い物もできたし、スタジオクラスター北軽井沢分室への荷物の移動も無事完了、パソコンをセットし、スピーカーを配置してレイアウトが落ち着いたらラジオをつけて一休み。そうしたら東京は大騒ぎになっていた。原宿駅構内では倒木があり、山手線が止まっている。早い決断で東京を離脱して正解だったのだ。とはいえ、天災は決して他人事ではない。無事でいられることは運河いいだけで、ただひたすらの感謝であるのだ。

▲ ドライブの後を台風駆けてくる

0823・火・処暑・

 今度のオリンピック、日本に対する声援が大きかったような気がしてる。日系人の多いブラジルだから、という気もするが、相手選ばずの熱狂こそがブラジル人気質、ということもいえるだろう。それにしても頑張ったマラソンのねこひろしさん。日本代表でなく、カンボジア代表ではあったけど、日本にもカンボジアにも恥はかかせなかったような気がする。日本のメディア、もっと中継してあげればよかったのに、NHKラジオでは最後にちょとだけ、彼の頑張りを放送していた。他のメディアではどうだったんだろう。結果、成績はお尻から二番目。でも、ビリッケツじゃないんだよね。ねこさんよりも遅い選手がいたんだし、棄権した選手だっていたんだよね。頑張ったんだよね、ねこさん。よかったね、ねこさん。身長147センチのねこさん。オリンピックに出場したい、参加したい。その一心で邁進してきた彼の数年間の頑張りと、彼を支援していた人たちに、もっとみんなで拍手喝采してもいいような気がしてる。

 本日は午後から群馬県N町での透析である。コボちゃんがハンドルを握り、山のワインディングロードを疾走している。すると道路を横切る一匹の猿。自然豊かな土地であるから、ときどきコボちゃんは道路で生き物を目撃している。立派な角の鹿を目撃したこともあるし、闇に光るふたつの目を発見したこともある。だから猿も珍しくはない。とはいえ、人間とは遠い親戚の猿ということで、何となく気になってしまう。突然やってきて透析室の窓を叩くのではないかと気掛かりにもなってくる。猿というやつは人間に近いだけに図々しく、迷惑をかけることがあるからだ。食べ物を手にして油断していると奪われたりするし、食卓の砂糖壺を持ち去られたり、料理中の食材を盗まれたりもする。とはいえ、この場合の犯人はケニアのサヴァンナモンキーで、その現場は赤道直下のキャンプ地だったんだけど。けれども日本は猿にとっては特別な場所、パラダイス。というのは猿にとっての北限地であるからだ。温泉につかる猿の姿も雪景色に遊ぶ猿という絵柄も、世界的には珍しい。
 猿はときどき都会にも表れて人間を仰天させることがある。ベランダから侵入して住人と鉢合わせすることもある。猿という生き物、自分たちが人類の祖先であることにもしかして気づいているのかもしれない。やたら馴れ馴れしいのである。人間の周囲が餌に豊富であることを熟知しているのである。だから山あいの観光地では猿と闘っている人たちも存在する。彼らは腰にエアピストルを携帯し、肩からは電動式マシンガンを下げて商店街をパトロールする。そうして店先の食べ物に手を出したり、観光客を脅しその持ち物を盗み出そうとする野生の猿たちを撃退するのである。
 ある時期までボクは猿が苦手だった。猿との衝突をいくつか経験しているからだ。デパートの屋上で突然、ふくらはぎに噛みつかれたこともある。小学生のボクが下に観られたのかもしれないし、背後にケージが置いてあり、そのカニクイザルが自由に出入りできるようになっていたことを知らなかったせいである。イラストレーターとなってからは画家の集団旅行で訪れた観光地でニホンザルと睨めっこになったこともある。猿が出没するエリアで食べ物を持って移動することは厳禁なのである。ケニアのサヴァンナではベルベットモンキーの集団に包囲されてホテルのボーイに救出されたこともある。でもナイロビの野生動物孤児院でチンパンジーのセバスチャンに出会って以来、ボクは猿に対するレスペクトを覚えてしまった。ボクと彼は一本のシガレットを交互に味わったマブダチとなったのである。それからは猿とうまくやれるようになっている。雨の日の動物園では檻の中でひとりぽっちになっていた黒くて大きなテナガザルとずっと手をつなぎながら聞えない言葉で語り合ったこともある。相手が誰でもリスペクトする気持ちは通じるのだ。生き物とうまくやるには、これ以外の方法はないような気がしている。
 会津西街道を走っているとき、山葡萄を食べている白猿の親子連れに遭遇したことがある。クルマを止めてコボちゃんと盲導犬アリーナはその様子をじっと観察していたが、彼らは襲いも逃げもしなかった。コボちゃんと盲導犬アリーナに害意のないことが伝わっているのだ。野生動物たちはいつも人間を注意深く観察している。その彼らとうまくやる方法はリスペクト。もしもそれができなければ、お互いの距離を守ることしかない。ま、どんな場合にせよ、人間の側の責任は大きいのだと思う。

▲ 路渡る猿と目が合う夏の山

0824・水・

 朝から天気がよくない。台風の影響である。コボちゃんはアルルとの散歩に躊躇している。でもボクには好都合。カレンダー制作に集中できるからである。今回の滞在では来年度カレンダーの原画13点すべてが仕上がっていなければならない。そして残るはあと5点。下絵の未完成は3点。アイディアの決まってないのはあと2点。マンネリにならないよう苦労しているところなのである。
 昔から季節物(きせつもの)で苦労している。最初の連載が小学館の少女雑誌、「女学生の友」の星占いだった。表紙が水野英子先生の美しいイラストレーションで、裏表紙がボクのカラー版星占いであったのだ。春夏秋冬、十二宮をマンネリにならないよう描き続けるのである。これがなかなかの苦労なのだ。星占いならまだしも、月刊雑誌の表紙や扉絵だとまともに季節感と向き合わなければならない。とはいえ、連載が5年も10年も続けば大概の物は絵にしてしまっている。それをマンネリにしないよう、あれこれと工夫して描くのである。ま、2017年度のエム ナマエオリジナルカレンダーがどれだけマンネリから脱却できたか、もしくはできなかったかは、どうぞお手に取ってご確認ください。ご注文はエム ナマエ公式ウェブサイトで、この秋からの受付です。

▲ 夏の雨ぼくのかく絵に音が降る

0825・木・下弦・

 オリンピックが終わって少しは日常が戻ってきたけど、まだまだメダル獲得最多数の話題が続いている。アスリートの話題が続いている。いつまで続くのだろう。2020年東京オリンピックを成功させるまではオリンピック熱を下げさせまいとしているのだろうか。早く日常に戻して欲しい。いつもおんなじ、いつもとおんなじがいちばんいい。今日もこれ、やっぱりこれがいちばんいい。ボクはあんまり飽きることがないのだ。飽きないことに飽きていないのだ。
 やっといい天気になってきた。ちょっとは夏らしくなってきた。気がつくと外では蝉が鳴いている。でもまだカレンダーの絵は仕上がらない。ここひとつにアイディアが集中しないのだ。いつもおんなじが好きで、飽きないことに飽きない人生にはマンネリの打破が難しいのだ。ううむ。人間が柔らかいんだから、もっと頭も柔らかくしなくちゃね。

▲ 山の蝉そこから僕が見えますか

0826・金・

 終日「おえかき」をしている。マンネリズムと闘いながらスケッチブックと取っ組み合ってる。アイディアは出たけれど、それを絵にするのが難しい。全盲イラストレーターの最初の関門は思いついた絵柄を実現するための手の調教なのである。つまり練習なのである。そのためにはスケッチブックの浪費が必要なのである。という訳で頭をクラクラさせながら下敷きのボール紙に圧力を加えているのである。貫通せよとばかりの筆圧でドローイングを続けているのである。

 今日はトラネコミミコ記念日。10年前の今日、トラネコミミコは我が家にやってきた。だからという訳でもないだろうが、トラネコミミコがいきなり室内を駆け出した。あちらこちらと駆け回る。そして小さいが、激しい羽音が聞こえてきた。大変だ。小鳥が迷いこんだのだ。
「きゃあ、ダメよダメダメ。やめなさい!」
 コボちゃんが反応した。トラネコミミコを抑え、窓を開けて気の毒な山鳥を逃がそうとする。けれども小鳥はパニック。開こうとした窓の隙間に自分から首を突っ込んで一声、ピーと悲鳴を上げたきり、あっけなく死んでしまった。コボちゃんも悲鳴を上げた。可哀想なことをしたと繰り返し嘆いている。繰り返し繰り返し悔やんでいる。何度も経験してきたことだが、本当に小鳥はあっけない。鳥という生き物はあっけない。だから鳥は飼いたくない。そう決めて数十年が経過していたが、キジバトポッポと暮らすことになってしまった。交通事故に遭遇したキジバトを保護して瀕死の状態を回復させたのだが、彼の翼は複雑骨折しており、飛べない鳩となっていたのだ。ボクたちで守ってやるしかなかったのである。鳥は自由に空を飛んで初めて鳥なのであって、鳥の幸せもそこにある。だから子猫のようにじゃれついていた小鳥でも、自分が自由であると気づいた瞬間、飼い主の手からはばたいて飛び去るのである。
 夜になって、おかしな声が聞こえてきた。鳥かとも思うがこんな雨の降る夜に鳴く鳥なんているのだろうかと疑問である。となるとカエル?それとも鹿?でも、どう聞いても鳥の声に聞こえるのだ。それもすぐ近くで鳴いているように聞こえるのだ。いつまでも鳴いている。繰り返し鳴いている。それも決まった間隔をおいて。録音を取ったので、いつか誰かに聞いてもらいたい。このあきらめない様子は、もしかしたら、昼間飛び込んできて死んでしまったあの小鳥の片割れがパートナーを呼んで鳴いているような気もしてくる。そうでないとよいのだが。本当に可哀想なことをしてしまった。
 雨が激しくなってきた。雷鳴も轟いている。屋根を叩く雨音と鳴り響く雷鳴にアルルはパニック。ボクの座っている椅子に体を寄せて振るえている。そしてラジオが不安材料を伝えている。嬬恋、長野原、草津に大雨洪水土砂崩れ警戒警報が発令されたのだ。明日は町で透析である。途中、何もないとよいのだが。

▲ ただ雨の降るばかりかな軽井沢

0827・土・

 未明に起きてテーブルに向かう。スケッチブックを開いてドローイングを繰り返す。鳩のフォルムを様々に繰り返す。来年の表紙は女の子と鳥たち、と決めたのだ。タイトルは- BIRDFULL -で日本語キャプションは愛鳥年間。愛鳥週間でなくて愛鳥年間。来年は酉年なので、そういう洒落なのである。
 目が見えないで絵を描き続けていると、どんどん下手糞になっているような気がしてくる。不安でたまらなくなってくる。だから練習する。腕と手と指を動かしてドローイングを繰り返す。イメージの命ずるままに鉛筆の先端を運び続ける。そうしてもう大丈夫と思えたところで画用紙に向かうのだ。そして、できた。あとはコボちゃんの目覚めを待つだけ。彼女からOKが出れば下絵は完成なのである。

 心配した通りである。昨夜の大雨洪水土砂崩れ警戒警報に次いで、今朝のニュースは長野原までの道路で倒木があったと報じている。となると、これはヤバイぞ。無事に透析を受けられるかどうか。とにかくボクの命は人工透析という医術に支えられ、維持されている。さぁ、群馬県、どう対応してくれるだろう。とにかく頼りにしてまっせ。

 夜である。表紙の下絵も完成し、透析も無事に終わった。群馬県産赤城豚の生姜焼きと嬬恋キャベツの千切りで夕食も済んだ。そしてコボちゃんと小説「泥の川」を橋爪功の朗読CDで読了してもまだ夜は終わらない。だから続いて音声映画「阪急電車」を観る。ボクのパソコンにはお気に入りの音声映画が数十本、ストックされてある。それらを目の見えないボクと同じ立場になってコボちゃんは楽しんでくれるのだ。イタリア産の青かびチーズ、ゴルゴンゾーラを肴にウィスキーをちびりちびりとやりながら。雨にもやられず風にもやられず、この日も無事に暮れていく。ありがたいことである。ひたすら感謝の日々である。

▲ ウィスキーつげば氷が歌い出す

0828・日・

 朝、雨音を背景にカレンダー原画を仕上げている。ビートルズのサージェントペッパーロンリーハートクラブバンドを聴きながらパステルカラーの世界で遊んでいる。するとたちまち1967年の自分に戻ってしまう。慶應義塾フレッシュマンの自分である。その自分が春の雨音に心を濡らしながらレコード盤に針を落とそうとしている。やがてオーケストラのチューニングが聞え、激しいギターのイントロダクション。そしてポールの歌声が幕を開く。ペパーランドの不思議楽団が世界を躍動させる。音楽の力は凄まじい。メロディーと音色がドコデモドアのようにボクをどこへでも連れていく。遠い過去の匂いも記憶も呼び寄せる。ビートルズはボクにとってのタイムマシン。何かを忘れかけたとき、ビートルズは大切なことを目覚めさせる。そうしてボクも蘇るのである。

 カレンダーの原画たち、13枚の仲間たちが全員集合した。彼らは全員勢揃いしてキャリーケースに収まり、クルマの後部座席で揺れている。アルルと並んで揺れている。トラネコミミコはボクの膝で揺れている。今夜の軽井沢は道路が混雑していた。それもそのはず、濃霧で見通しが悪いのだ。日曜ドライバーがどれだけいるか知らないが、この濃霧ではプロドライバーだてまともには走れない。道路をよく知っているコボちゃんだって飛ばせない。このままだと東京にたどり着くのはいつのことになるのやら。おまけに寒くて震えている。湿度が高いせいで窓ガラスが曇るため、暑くもないのに冷房を入れなくてはならないからだ。まだ8月なのにボクは既に寒さに震えているのだ。膝のトラネコミミコもボクの膝から暖を取ろうと必死にしがみついてくる。でも仕方がない。ボクが盲人で、その上この濃霧のため、コボちゃんも盲人になったら、アルルもトラネコミミコもこのクルマごと、地獄へ真っ逆さま、ということになってしまう。この世界、どれだけの運命共同体がこの瞬間を移動していることだろう。誰も見な、無事を祈って何かを運んでいる。自分という人間を、家族という人間を、そして友人という人間を運んでいるのである。ありとあらゆる荷物という荷物を運んでいるのである。億万年の時間単位、回転し続ける銀河の辺境、太陽系の地球という天体、高速で巡回するこの第三惑星の表面を、バクテリアの歩みで移動しているのである。などと考えていたら、すべてが愛しくなってきた。右も左もお隣さんも、これから無事にお家に帰ろうね。

▲ ハンドルを霧が邪魔する峠道

◇ バーチャル東海道五十三次コース 石部に到着、通過しました。
次は草津。あと18,866歩です。現在の歩数、916,134歩。
3周目挑戦中!





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