全盲のイラストレーター ◆エム ナマエ◆ の超個人的十七文字ブログです
ボクは中途失明した画家。週に三度の人工透析で生かされています。なのに、今でも 画家で作家。ボクは思います。人生、何があっても大丈夫。
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Author:emunamae
いつも日記をつけてます。失明したら頭脳がノート。
だから、記憶力のトレーニングのためにも、前日の出来事を振り返り、コツコツ日記をつけてます。



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2014年7月21日~27日
☆ この日誌は透析患者が病人ではなく、機械が腎臓の仕事をしてくれる以外は一般の人と何ら変わらなく暮らしていることを知っていただくためのものでもあります。また、この文面では難易度に関係なく、熟語や固有名詞などの漢字に振り仮名をしてありますが、これは視覚障碍者のための音声出力をサポートするためのものです。決して皆様がこの漢字を読めないと思っているわけではありませんので、どうかご容赦を。

0721・月・海の日・
 引き続き北軽井沢にいる。コボちゃんはアルルとの散歩を天から与えられた仕事でもあるかのように朝に夕に励行している。ボクは当然のこととして「おえかき」に集中している。
 東京が晴れているという。そして北軽井沢も晴れている。昨日までの悪天候が嘘のよう。そして東海地方までの梅雨明けが宣言された。おそらく、明日あたりが関東地方の梅雨明けとなるのだろう。
 本日は愛猫キロンの命日である。そのせいだろう。膝に乗ってきたデブネコミミを、思わず
「キロン!」
と抱きしめてしまった。キロンが昇天したのは4年前の今朝だった。
 夕方、気分転換にコボちゃんと映画『阪急電車』を観る。サピエ図書館のシネマデイジーで最も感動した映画のひとつである。今日の映像解説はコボちゃん。けれども感動のあまり、ときどきは沈黙してしまう。ボクは映画も原作も充分に味わっているので、ストーリーはしっかり頭に入っている。そしてコボちゃんは画面に、ボクの目はスケッチブックに集中している。ま、ボクの目というのは、もちろん精神の目のことだけどね。
 夕食のテーブルにヒグラシの声が届いている。ヒグラシが鳴いたのは梅雨明けを思わせる天気のせいだとコボちゃんがいっている。とにかく、ボクはヒグラシが好き。本物の夏が来た。心からそう思わせてくれるから。
 朝から晩までフクロウの絵で苦労したせいだろうか。ラジオ深夜便の原画を仕上げて、ビーフステーキでビールをやっていたら、窓の外でフクロウが鳴いている。昨日、コボちゃんがアルルと林で目撃した、あのフクロウだろうか。不思議な声である。
▲ 黄昏に ひぐらし鳴いて 帰り道

0722・火・
 北軽井沢スタジオを出た途端、頭の上で蝉が鳴き出した。昨日までの雨はどことやら。青天である。真夏である。その蝉たちに見送られるようにコボちゃんに抱かれたデブネコミミが抗議の声を揚げながらクルマへと運ばれていく。そう。せっかく慣れた北軽井沢から、今日は東京へ戻るのだ。
 カーラジオが梅雨明け宣言を伝えている。連休明けに梅雨明け宣言。休みが終わってからの梅雨明け宣言。やっと雨を気にせず遊べる天候になったのだ。皮肉なことであるけれど、世の中はそんなものなのだ。
 梅雨明けと同時に小学校が夏休みになったらしい。カーラジオをつけたら電話子ども化学相談をやっている。この番組、ボクの愛聴番組なのである。
 東京へ向かえば向かうほど、民放ラジオの電波がよくなってくる。NHKには期待できない突っ込んだニュース解説も聞こえるようになってくる。あの岡山県の誘拐犯の情報も入ってくる。それにしても、なんたる執拗さ。自宅の一室の窓を撤去し、防音処置を施し、外からカギをかけられるように改築した、その費用が800万円。しっかりと金のかかった誘拐計画だったのである。街で偶然見かけた少女を、どれほど可愛いと思っていても、それが相手に愛として伝わらなければ、愛は実現しない。脅して閉じ込めて無理矢理に11歳の少女を我がものにしようとする、その自分勝手には身の毛がよだつ。犯人の自室は少女アニメキャラのポスターだらけで、そもそもが一方通行の愛情趣味だったのかもしれないが、いくら愛しても二次元の生き物は人間の愛を理解することも受け入れることもない。そして、感情を有する三次元の少女は、偏執狂のエゴイズムを忌み嫌うであろう。そこに考えが至らないからこそ、無計画な誘拐を計画するわけで、そこに誘拐犯の稚拙さが見え隠れする。愛されたかったら、まず愛することを学ばなければならない。一方通行の愛は成就しない。そしてエゴな愛も。そう。愛はインタラクティブ。愛は育てるもの。愛は相手の幸せを願うもの。この世にインスタントな愛など存在しないのだ。
 本日は北軽井沢から透析室へ直行。ちょっと大変、ちょっと疲れました。へとへとになって帰宅したら、浜松の眼科医、I先生から鰻の蒲焼が届いていた。間に合ってよかった。帰宅が遅れたら、返送されてしまうところだったのだ。賞味期限切れということで捨てられてしまうか、誰かの口に入ってしまうところだったのだ。さて、疲れてます。蒲焼は食べごろです。食べたいときに食べるのが、いちばんおいしい食べ方です。というわけで、ビール片手にでっかい蒲焼をペロリといっちゃいました。ああ、土用の丑の日シーズンに蒲焼にありつけるなんて、何年ぶりのことだろう。いや、何十年ぶりのことだろう。というわけで、ニホンウナギの絶滅に協力した、本日はエム ナマエ悪い子記念日となりました。I先生、ご馳走様。
▲ 蒲焼に 誘惑されて 沈没す

0723・水・大暑・
 本日は大暑である。水曜日である。そしてこの水曜日も先週に引き続きお天気おじさんの森田君が自慢話を披露している。小鼻を膨らませている。それは、先週予告した梅雨明けが的中したからである。そう。彼は先週のこの時間、来週は梅雨明けの報告をしていると予言したのだ。でもさ、それって、気象予報士だったら、誰でもみんないってたよ。ボクも予想してたし。
 三鷹ストーカー殺人事件の犯人にデイキャッチの荒川強啓氏がいう。
「あきらめなければ、前へ進めないのですよ」
 まさにその通り。犯人は彼女をあきらめられず、他人のものになってしまうくらいなら、いっそ命を奪おうと決めてしまったのだ。荒川強啓氏、たまにはいいことをいう。感動させるくらいにいいことをいう。おそらく、強啓氏、これまで無数にあきらめてきたのだろう。そして、このボクも。勇気あるあきらめが人生を作っていくのだ。
 佐賀県にオスプレイがやってくる。いきなりやってくる。佐賀県にやってくれば、沖縄からオスプレイが消えるかというと、それは消えない。佐賀県のオスプレイは自衛隊が購入するからだ。アメリカの言い値で購入するのだ。だってね、アベちゃんも外務省もアメリカのポチだから。そして、ポチはオス。飛んでくるオスプレイもオス。いや、マスカラつけたメスプレイが飛んでくるかもしれない。そして在日オスプレイとまぐわって、日本中がオスプレイだらけになるのだ。そして集団的自衛権行使に貢献させられるのだ。
▲ あのプレイ 忘れられない オスプレイ

0724・木・
 暑い。朝から冷房をかけている。それでもガラス窓のあちらから熱気が伝わってくる。そろそろ猛暑日を記録した頃だろうか。でも、ボクは寒いよりは暑い方がいい。寒いのは本当に嫌なのだ。
 裁判員裁判の判決に最高裁が待ったの裁定を下す。民間人の感覚と法曹の常識に隔たりがあったということだろう。裁判所はこの隔たりに期待して民間人に判決を委ねたわけだが、世の中はお役人が計画した通りにはいかなかった。おそらく、民間人の感覚では、殺人事件の半分が親族間における凶行だという事実を容認できないのであろう。無論、嬰児の命を生みの親自身が奪うという案件にも最大限の罰を下したかったのだろうとボクは想像するのだ。
 NHK厚生事業団から今年のハート展へのイラストレーション制作を依頼される。毎年年末に開催されるこのイベントも今年で20回を数える。その記念すべき今回は、過去に功績のあった作家に制作依頼をするとのこと。ちなみにボクは第一回と第九回に参加している。有名アーティストやタレントが参加してきたNHKハート展である。名誉なことと、ご依頼を拝受した。
 水曜日、台湾で飛行機が落ちた。本日、アフリカはブルキナファソを飛び立った飛行機が行方不明になっている。ウクライナで民間機が撃墜されてから1週間。ボクの霊的指導者、井村宏次先生が飛行機事故は連続するものとおっしゃった通りになっている。世の中は、理屈では説明できないことばかり。それにしても、心が躍るようなよいニュースが続かないのはどうしてだろう。もしかしたら、よいニュースを人々は歓迎しないのかもしれない。新聞社や放送局も歓迎しないのかもしれない。
 大相撲中継の彼方で強烈な電磁波による雑音が聞こえている。
「雷雲が接近してるよ」
 するとコボちゃんが自転車の鍵をつかんで玄関ドアから飛び出した。
「大変。雷雲が通り過ぎるのを待っていたら、焼き鳥が売り切れちゃう」
 どんどん雑音は大きくなる。遠い雷鳴が近づいてくる。ヤキトリ大好き民族のコボちゃんが、大雨でずぶ濡れになる事態も避けたいが、落雷で電気人間になるのは、もっと避けたい事態。考えているうちにも雷鳴が大きくなる。もう遠来なんかじゃない。はらはらしてたら、猛烈な勢いで鉄の扉が開いた。
「間に合った。自転車に鍵をかけたら、雨粒が落ちてきた!」
 その通り。窓の外は滝壺になっていた。
 それからが大変。我が世田谷区はナチスドイツからのV2号が次々に落下するロンドンか、それとも絶え間なくミサイルが飛んでくる今のガザみたいになってしまった。ラジオから雑音が聞こえた0.3秒後にご近所で爆発音が轟く。もう雷鳴なんかぎゃない。爆発音なのである。数億ボルトの静電気が空気を膨張させる音、そのものが聞こえているのだ。雷鳴などという反響音ではないのだ。
「ジバッ。ジバジバ!」
 ラジオが叫ぶ。
「でかいぞ」
 コボちゃんが構える。アルルが息をのむ。
「カリカリカリカリ、グワラ、ドッシャーン!」
「電信柱かな。神社のご神木かな。それともご近所の家かな」
「とにかく近かったわね」
 やがてラジオが世田谷区の停電発生を伝える。世田谷線が落雷により停止していることも告げる。
「はっ、はっ、はっ、はっ、」
 アルルが過呼吸になっている。ボクの顔の前でデブネコミミが招き猫になっている。
「ねえ、パソコンは大丈夫?」
「電源もインターネットも外してある」
「はずさないとどうなるの」
「もしものときは、データが台無しになる」
「まあ大変!」
 といってコボちゃんは大急ぎで電子レンジのコンセントを引き抜いた。
「れれ、パソコンじゃないんだ」
「だってね、電子レンジがやられたら、明日から物が食べられなくなる」
 やがて雷雲は遠ざかり、我が家に平和が訪れた。そしてボクらはまだ温かいヤキトリを頬張りながらビールを喉の奥へ流しこんだのである。
▲ 落ちまして 雷神どうも すいません

◇ バーチャル『奥の細道』コース  鶴岡を通過しました。
次は酒田。あと、54,073歩です。現在の歩数、2,043,927歩。2周目挑戦中!

0725・金・
 またまた全国の日の出レポートです。札幌は4時17分、仙台は4時32分、東京は4時43分、名古屋は4時56分、金沢は4時53分、大阪は5時3分、広島は5時15分、松江は5時10分、松山は5時15分、福岡は5時25分、那覇は5時51分。つまり、日本列島は東西に細長い。そういうことです。
 窓の外がうだってる。東京の最高気温は35.6度。今年初めての猛暑日である。エアコン設定は27度。サンルームもパソコンルームもダイニングも、みんな冷え冷え。と書くと、なんだか豪邸みたいだけど、どれも小さく狭い部屋ばかり。ワンプラネットライフスタイルのダウンサイジングを宣言したおかげで、歩く余裕もありません。ただ、こんな猛暑日に、人も犬も猫も鳩も、涼しく暮らせることが感謝です。
 東京芸大の順教授がナウシカのメーベを開発したという。試験飛行にに成功したという。すごいことである。嬉しいことである。『風の谷のナウシカ』はボクが失明直前まで楽しんだ映画。そしてメーベを操って自由自在に空を飛ぶナウシカに、どれだけの憧れを覚えたことであろう。そしてその憧れを形にして、自ら空を飛んでいる人間がいるのだ。誰もがしっているハングライダーではない。ナウシカのメーベのように、ジェット推進で大空へ舞い上がる超軽量の無尾翼グライダーなのである。操縦者は翼に腹ばいになり、体重移動によって飛行体をコントロールする。おそらく、順教授先生はナウシカになり切って、そらの散歩をするのだろう。そしてこの新しいタイプの飛行機が未来の飛行機を変えていくのだろう。夢は現実のタマゴ。世界中、いたるところに夢タマゴがあり、夢工場がある。
 昨日、日馬富士(はるまふじ)と豪栄道(ごうえいどう)が見事な取り組みで観客を唸らせた。横綱の名誉を守りたい日馬富士と、大関昇進を心に描く豪栄道の堂々たる勝負だった。無理矢理の張り手が得意な横綱と、引き技ばかりの万年関脇ではない、力士と力士のぶつかり合いである。真剣勝負である。そう。観客はこうした勝負を目当てに相撲見物にやってくるのだ。星の数だけを目的にした、透かし技や引き技主体の相撲を見たいわけではないのだ。そして今日、白鵬(はくほう)は大関稀勢の里(きせのさと)と堂々たる取り組みを展開し、敗北した。けれども見事な敗北である。さすが大横綱(だいよこづな)である。いつの時代も、勝敗ではなく、取組そのものに観客が満足するような相撲が続けば、きっと相撲人気は復活するだろう。
▲ たのむから 暑い暑いと いわないで

0726・土・
 本日の東京の日の出は4時44分で、ボクの活動開始は日の出と同時。お日様に感謝してスタート。この週末も北軽井沢のお世話になるのです。そう。明日は信濃デッサン館35周年記念パーティーに出席するのです。
 朝8時のNHK、「ラジオ文芸館」は小松左京の『ゆきずり』。今週のラジオ文芸館も、コボちゃんと聴いている。ここは横川サービスエリア、軽井沢への通り道である。物語は面白く、けれどもお腹はすいてくる。胃袋が悲鳴をあげている。どうしよう。まだまだ話は続いていく。
「ええい、ここは勇気の出しどころ。ポケットラジオを貸してチョーダイ!」
 そういってコボちゃんはクオリスから出ていった。間もなくボクは横川の釜飯弁当、コボちゃんは高崎のとりめし弁当をかっこみながら、カーラジオで物語のラストまで楽しめたのである。
 黄昏の北軽井沢、二度目のドライブですっかり落ち着いたデブネコミミが背中に貼りついているのを感じながら、ラップトップパソコンに向かって文章を考えていた。すると、窓の外でヒグラシが鳴き出した。東京では聞きたくても聞けない、本物のヒグラシである。ケータイの着信音の合成音ではない、本物のヒグラシである。一昨年、軽井沢から東京へ向かう時、森中がヒグラシになっていて、押しつぶされるような気がしたことがあった。その音響の猛烈なこと。まるで新開発の音波攻撃兵器みたいだった。ヒグラシは単独がいい。単独だと、その優雅さが静けさを演出してくれる。いつまでも聞いていたいと想う。けれども集団はいけない。集団になると、様相が一変する。鳴き声は騒音となり、存在は脅威となり、絶滅させた方がいいような気さえしてくる。ああ、群れをバラバラにして、それぞれの固体を味わえば、どれも魅力的な生き物なのに。そんな生き物、街の中にもわんさかいるような気がします。
 夜になった。暑さは残っているけれど、林は静かになった。鳥たちはさえずりをやめ、ヒグラシは沈黙し、聞こえるのはただせせらぎとカエルの声。京都で38度を記録した猛暑も、この軽井沢では木々が発生する涼しさに圧倒され、退きつつある。安心した途端、鰻の匂いがする。蒲焼の匂いがする。食欲をそそる匂いがする。いや、もしかしたらヤキトリかも。どうしてだ。どうしてだ。林の中に屋台でも現れたのか。と、冷静になったら、そんなことがあるわけがない。あれはお隣の別荘のバーベキューに決まっている。どうして醤油の焦げた匂いは、これほどに魅惑的なのだろう。世界の調味料、醤油万歳。ああ、お腹がすいた。
 20時を過ぎた途端、連続的な爆発音。花火大会である。大玉、中玉、スターマイン。遠く近くに聞こえてくる。さすが軽井沢。派手にドンパチやらかしている。森のフクロウもたまらない。近所の犬も吠えている。我が家のアルルは世田谷から雷が追いかけてきたとパニクッている。やっと花火大会が終息したと思ったら、今度は別荘の若者たちがプライベートな花火大会。窓の下でドンパチやらかす。さっきの醤油の焼ける匂いも彼らの仕事だったのだ。
 アルルは雷もコワイが花火もコワイ。暑くて、やたら大きな音のする夏なんか、早く終わってしまえと思ってる。きっとそうに決まってる。
▲ 炭火焼 花火大会 開始前

0727・日・
 目覚めると涼しい。ラジオをつけると、ガザでの死者が千人を超えたといっている。イスラエルはいつまで無差別攻撃を続けるのだろう。憎しみのスパイラル、いつまで続くのだろう。そして日本は、世界の紛争に係わる準備をしている。国民の平和な暮らしに波を立てようとしている。権力には何も見えない、聞こえない。
 お昼前、コボちゃんと彩色作業をしていたらラジオに雑音。アルルは緊張。遠くで雷鳴。天気予報が当たったのだ。やがて窓の外は滝壺。アルルはおえかきをしているボクとコボちゃんの間に潜りこんできた。けれども、この雨で山は涼しくなる。おかげで1枚、絵が完成した。そして東京にも同じような雷雨があって、午後はやっぱり涼しかったという。みんなの仕事もはかどったかな。
 アルルとデブネコミミに留守を任せ、ボクらは上田へ向かう。信濃デッサン館35周年記念パーティーに出席するためである。
 開演時間直前にホテルに滑り込む。けれども、やけに小さなホテルである。玄関からフロントまで1秒。
「クリスタルホールはどこですか」
「すいません。うちにそんなホールはありません。もしかして、東急インに御用があるのではありませんか。ここは東横(とうよこ)インです」
 フロントの女性が親切に道を教えてくれる。目指すホテルは駅の反対側だった。クルマで移動しながら考えた。東急インと東横(とうよこ)インって親戚かもしれないね。
 パーティー会場にたどり着くと、てんまあつ子さんのストラディバリが歌っていた。歴史を超えて、美しさを超えて、上田の空気を震わせていた。
 窪島さんと世田谷美術館長との対談に心を打たれる。このおふたりの対談を拝聴するのは二度目。おふたりは長い友人なのである。
 パーティーで発言を求められることを知り、緊張と感謝を覚える。こんな大切な会にお誘いをいただいただけで名誉なことなのに、である。尊敬する相手に認められることは何歳になっても嬉しい。
 それなのに、ろくなスピーチもできずに落ち込む。窪島さんを讃えるつもりでひねくれた人、なんていっちゃってる。窪島さんも素直でない人だが、ボクもまた素直でない。
 思いがけず意外な知り合いが参加していて楽しいおしゃべりができた。人形劇団ポポロの古い関係者や、昨年の無言館成人式の参加者や、窪島さんのお嬢さん、コカリナの黒坂さん。無言館の絵画修復を担当しているのは漫画家の多田ヒロシさんのご子息だったし、絵本作家の田島征三(たしませいぞう)さんは40年来のお付き合いだし、ああ、それぞれの人生だなぁ、なんて感慨無量になってしまった。これすべて、窪島誠一郎の吸引力が作った結果。やっぱり、陰ながら尊敬してしまう。とても本人にはいえないけれど。
 ホテルの駐車場を離れた途端、コボちゃんの目にフルーツショップ「フルーツのいも平」という看板が飛びこんだ。もしかして、真田幸村時代からの老舗かもしれない。当時から、街道の店先で大きな釜で芋をふかしていたりして。
 中軽井沢から北軽井沢へクルマを飛ばしていたら、またまたコボちゃんの目にすごいものが飛びこんだ。
「鹿よ。立派な角の鹿よ。動物園と奈良でしか見られないような見事な鹿よ」
 鹿は道路の横断をしているのだ。今は真夜中、23時半。野生が復活する時刻なのである
「今度は狐よ。狐が道を横断してるの!」
 楽しいパーティーのおかげで帰宅が遅くなり、素敵な軽井沢ナイトサファリができたってわけだ。
▲ 別荘地 ライトに浮かぶ 鹿の角





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