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全盲のイラストレーター ◆エム ナマエ◆ の超個人的十七文字ブログです
ボクは中途失明した画家。週に三度の人工透析で生かされています。なのに、今でも 画家で作家。ボクは思います。人生、何があっても大丈夫。
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Author:emunamae
いつも日記をつけてます。失明したら頭脳がノート。
だから、記憶力のトレーニングのためにも、前日の出来事を振り返り、コツコツ日記をつけてます。



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2013年1月14日~20日
☆ この日記は、透析患者が病人ではなく、機械が腎臓の仕事をしてくれる以外は、一般の人と何ら変わらなく暮らしていることを知っていただくためのものでもあります。また、漢字や熟語、固有名詞には振り仮名がしてありますが、漢字の難易度とは関係がありません。これらの振り仮名は視覚障害者のための音声モニターを容易にするためのガイドです。

0114・月・成人の日・
 5時に起きて活動開始。なんとか頭に浮かんだゆめぞうの姿を実際の絵にしていく作業は面白い。考えることはつらいけど、手先や体を動かすことは楽しいのだ。
 コボちゃんが外を見て騒いでいる。
「雪だ。大雪だ」
 夜になれば、雨が雪になると聞いてはいたが、これほど早く雪になるとは思わなかった。さあ、どうしよう。我が家の愛車クオリスは、ノーマルタイヤしか履いてない。おまけにコボちゃんは雪道ドライブをしたことがない。
 外に出ると吹雪いて(ふぶいて)いる。ボクもコボちゃんも完全武装。コボちゃんはふたり用の大きな傘を、吹雪に向かってかざしている。積もった雪に足を取られ、滑りそうになる。ボクの白杖に雪がかみつき、もぎ取られそうになる。それでも、世田谷線の松原駅までたどり着けば、あとは電車で透析室まで一直線。
 やっとたどり着いた世田谷線のホームには、誰もいない。貼り紙を見てコボちゃんが悲鳴をあげる。世田谷線が止まっているのだ。仕方がない。透析室まで歩くしかない。けれども、距離はまだ半分もある。
 雪道に自動車が動かなくなっている。空しくタイヤが空回りをする。どこかで猫が鳴いている。必死な鳴き声に、姿を求めたコボちゃんが、自動車の下にうずくまっているノラネコを見つけた。助けてやりたいが、こちらも必死。どんな天候でも、透析だけは受けなくてはならない。
 病院の玄関にたどり着いたときは、皮手袋の指先が感覚を失っていた。10センチはあろうかと思われる積雪に、膝ががくがく笑っている。透析ロビーには、徒歩でたどり着いた患者さん、これから帰る患者さんが、それぞれ情報交換をしている。タクシーもこない。世田谷線も動かない。ご高齢の方も、電動車椅子の方も、みんな途方に暮れている。
 ボクが透析を受けている間、コボちゃんは透析ロビーで待機することになった。片道1時間の雪道である。家に戻った途端、引き返さなければならない。なにしろ、コボちゃんの送迎がなければ、ボクは手足をもぎ取られたデク人形。
 透析中のラジオからは、やたらと爆弾低気圧という言葉が聞こえてくる。上空の温度に比べ、関東平野に冷気が停滞して、この雪になったのだとか、気象関係者は言い訳に忙しい。
 透析中、ボクは悪寒が止まらなくなった。雪で体温が低下したのだろう。危機管理の原則は最悪の想定。ボクはインフルエンザを恐れ、タミフルを予防的に服用したいと頼んだが、医師は認めない。けれども、透析室も最悪の想定をしていて、ボクはマスクをかけさせられた。これで病院側のガードはガッチリである。
 透析ロビーで待機していたコボちゃんも震えが止まらない。エアコンの温度を最大にしても、寒くてたまらない。それもそのはず。エアコンが冷房の設定になっていたのだ。スタッフに頼んで、いくら温度設定を最大にしても、冷房では温まらない。誰だ。こんなマヌケをやったのは。まあ、仕方がない。頼んだスタッフの平均年齢が高くて、みんな老眼だったのだ。
 夜になって、世田谷線が動き出した。山下駅までいけば、オバQ線の豪徳寺駅まで歩いていける。経堂駅からはボクの足で我が家まで10分間だ。
 雪の山下駅前商店街をいく。いつもとは違う風景がボクのまぶたに浮かんでくる。いつもの、あの花壇も、雪に埋まっていることだろう。
 オバQ線に乗った途端、ケータイに電話。申し訳ないが出られない。見ると、龍平君からだった。ふと、闘い続けてきた彼の人生を思う。その年月と、ボクの透析人生の年数は重なる。その昔、彼と初めて会ったとき、ボクは霊感に打たれたように、彼にシンパシーを感じたのは、そのせいかもしれない。それ以来、ボクらは戦友のように親しく付き合ってきたのだ。
 経堂駅前のラーメン屋、光陽楼に飛び込む。熱いラーメンをすするが、肉体が疲れ果てていて、胃袋が食べ物を受けつけない。吹雪の雪中行軍は、予想以上にボクの肉体にダメージを与えていたのだ。
 いつもだったら、ほんの10分間の道のりが、タイヤで滅茶苦茶になった雪道のおかげで、まるで足が進まない。せめて転ばないように、コボちゃんの肩を借りて、一歩一歩と家路に長靴の足跡を刻んでいく。
 胸の鼓動が落ち着くまで、どれだけの時間がかかっただろう。ボクが息を整えている間、アルルはコボちゃんと、雪の積もった屋上で遊んでいる。ああ。我が家はなんと暖かいのだろう。
▲ 都会の子 吹雪の中で 雪達磨

0115・火・
 肉体が疲労している分、神経が高ぶっていて、眠っていられない。といって、起き出しても、何ができるわけでもない。パソコンデスクに向かって、ただ呆然としている。雪に白杖を取られつつの雪中行軍だったから、左肩や左腕がきしんでいる。チョコチョコ歩きをしたので、腰と背中に不快感が残っている。ダメだ。今日は仕事にならない。
 ボクはそれでいい。けれども、職場を任されているコボちゃんは、積雪の中を出勤する。おまけに、建物の入り口付近の雪かきもすると張り切っている。けれども、もう時間がない。あわてて滑って転んでもいけないので、早く出かけるように促す。
 昨日と同じ。疲れのため、食欲が低下して、何も食べたくない。ラジオからの雪情報に耳を傾けながら、ベッドに倒れこんでいる。ああ。メクラウオは雪の中では泳げないのだ。
 コボちゃんの帰りが遅いと案じていたら、愛車クオリスと駐車場の雪かきをしてきたとのこと。明日、うまくいけば、病院までクオリスに乗っていけるかもしれない。
 大相撲初場所。優勝候補の横綱、白鵬(はくほう)が若手力士の顔面に張り手を一発。けれども、そのまま寄り切られて黒星。ボクは横綱である白鵬(はくほう)や日馬富士(はるまふじ)の顔面への張り手が不愉快でたまらない。自分を優位に立たせるための技であるのだろうが、それで負けているのでは仕方がない。大相撲はボクシングではないのだから、今後は顔面への張り手攻撃は禁じ手にした方がいい。その方が相撲として美しい。
 今回の大雪で注目されたのが首都高速の脆弱性。乗り捨てられた自動車たちで、機能は完全に麻痺状態。東京オリンピックに向けての突貫工事が、今も尾を引いているのだ。あれから半世紀。この不完全な空中道路、瓦解しないうちに、そろそろ撤去した方がいいのではあるまいか。このゆで過ぎたスパゲッティーみたいな高速道路、東京の景観を台無しにしている。ことに、お江戸日本橋付近の醜悪さは悲劇的。道路関係のお役人、今度こそ頭を使って、効率のいい道路に作り直していただきたい。
 『忍者武芸帳』や『愛のコリーダ』で知られる世界的映画監督、大島渚さんが亡くなった。80歳とのこと。肺炎が直接の死因だが、長い闘病生活に別れを告げたかったのではあるまいか。闘う人生だったから、お疲れ様とお伝えしたい。若者であったボクらを心からワクワクさせてくれた映画監督だった。『忍者武芸帳』は、慶應義塾の日吉キャンパスの教室で鑑賞した。当事、学内での上映会が盛んで、黒澤明の『用心棒』や『椿三十郎』も、日吉の教室で鑑賞した記憶がある。『愛のコリーダ』はパリのシャンゼリゼー通りの映画館で観た。完全ノーカット版を大型スクリーンで鑑賞したわけだが、その美しい画面と、大島渚監督の戦争に対する憎悪をが印象的だった。日本ではお茶の間で知られる役者さんたちが、男も女も、アソコ丸出しで演技をしているのが印象的だった。メディアでの発言もユニークで、映画以外でもマルチのご活躍だった。ご冥福をお祈りする。
▲ 雪まみれ 空にくねくね スパゲッティー

0116・水・
 やっと日常のペースに戻る。2日分のノルマを取り戻そうと集中する。大都会東京、雪による後遺症からはまだ癒えていない。お日様、その熱いビームで、どうか助けてください。
 マッサージチェアに座っていると、ベランダからコツコツと窓ガラスを叩くものがある。外のキジバトたちだ。部屋の内側にいるキジバトポッポに対して、何らかの意思表示をしているのだ。けれども、それは決してフレンドリーなものではない。
「なんでお前は人間の側にいるんだ。お前は敵か味方か」
「おい、お前。ときどき猫の姿になるだろう。お前、本当は猫なんだろう」
「やーいやい。飛べるもんなら飛んでみろ!」
 窓ガラスをクチバシでつついているキジバトは複数だ。ときどき、激しい羽音もするから、キジバトポッポを謎のライバルと認識しているのかもしれない。ボクはふと、キジバトポッポがいじらしくてたまらなくなる。望んで人間と暮らしているわけではない。自動車と正面衝突をして拾われ、緊急避難でこの家に連れてこられたのだ。翼さえ治れば、大空に戻れるはずだったのだ。昼間になれば、窓ガラスの内側の、新聞紙の運動場を歩き回り、夜になれば、コボちゃんの差し出す指にとまって、鳥篭へ入れられる。そんな毎日を送っているキジバトポッポの気持ちを、自由自在のソトバトたちが、わかってやれるはずもないのだ。窓ガラスをつつく音を聞きながら、キジバトポッポはひたすら、乾いた足音をたてながら、新聞紙の運動場を歩き回るのだ。
 午後になって、お日様が顔を出してくれる。これで少しでも雪が溶けてくれれば、クオリスも動いてくれる。あとはコボちゃんのドライビングテクニック次第。
 日本政府の歴史認識に不足のあることをボクは問題にしている。けれども、それをアメリカから指摘はされたくない。ならば、アメリカの歴史認識は、どれだけのものなのだ。捕鯨の問題。ベトナム戦争。イラク爆撃。勝利という歴史的事実が、その罪悪に蓋をしているだけではないか。もしもアメリカが敗戦国であったなら、民間への絨毯爆撃も原爆投下も、君たちを一直線に死刑台へと導いていく。ネガティヴな歴史において、それがいかなる国であろうと、客観的な歴史認識は求められるのだ。
 ボーイング787が問題になっている。ブーイング787ともいわれている。しばらくの間、飛行機の旅は遠慮したい気分である。
 凍結した雪道を、コボちゃんの慎重な運転で往復して、無事に透析を終える。歩けば、パリパリと足の下で割れる氷が恐怖を誘う。今度の大雪で、亡くなった人、骨折した人、少なくはない。危機管理の基本は最悪の事態の想定。残雪ひとつで、平和な大都会が修羅場となる。安全と危険は常に裏表の関係にあるのだ。
 シングルモルトウィスキー、グレンリベットの味がやっとわかってきた。アイラスコッチとはまた別の、味わい深いウィスキーである。昔は、いわゆるスコッチのマイルドでスムースなテイストが好みだったが、今は個性的であればあるほどウィスキーが旨い。大きめのグラス一杯で、当代円楽(えんらく)と上方の新作落語と志ん生(しんしょう)を楽しむことができた。
▲ 駐車場 整列してる 雪達磨

◇ バーチャル東海道五十三次コー神奈川を通過しました。
次は保土ヶ谷。あと8,698歩です。現在の歩数、56,102歩。2周目挑戦中!

0117・木・阪神淡路大震災から18年・
 朝からコボちゃんとゆめぞうイラストレーションの仕上げ。ゆめぞうがウサギの双子に絵本の読み聞かせをしている絵なのだが、絵の中に絵本の絵がある、という構図。彩色をしながらコボちゃんが、
「この小さな絵本のページに、よくこんな細かい絵がかけたわね」
と驚いている。正直、自分でもよく描けたと思う。でも、気持ちさえ乗れば、どんな細かい部分の描線でも、左手の指先が正確にとらえてくれるのだ。この作業がうまくいっているとき、ボクには自分の描いている絵が見えている。ただ、この細かい部分の彩色は、コボちゃんが担当。ボクがやると、絵が滅茶苦茶になってしまう。
 昼、コボちゃんが有名鰻店の鰻弁当を買ってきてくれた。昨年、ほにゃらかデパートのはにゃにゃかブランド鰻で失敗したから、しばらく鰻はあきらめていようと決心したばかりだったが、この有名店の鰻なら安心だ。そして、大当たり。しばらくぶりに本物の鰻を食べた気分。絶滅寸前の鰻も心配だが、この贅沢はたまらない。落語ばかり聴いているから、登場人物が鰻を食べる度に、羨ましくてたまらなかったのだ。
 午後、月刊ラジオ深夜便のW記者に原画の引渡し。W記者は、原画よりも我が家のデブネコミミに興味があるのかもしれない。でも、今回のイラストレーションの絵の中の絵本には驚いてくださった。編集部に戻ったら、上司のTさんに自慢するのだといって、編集部へお戻りになった。
 夕方、アルルがお腹を雪と泥でドロドロにしてご帰宅。コボちゃんと散歩をしてきたのだ。ボクはまさかの転倒を用心して、雪の残った道路での散歩は遠慮した。でも、室内徒歩はもう飽きた。
 少し以前から、伝説の生き物を主人公にしたストーリーを考えている。今夜はそのメモをまとめる。時間はかかるが、はかどらない作業。ジグソーパズルのピースは、まだバラバラだ。
▲ 見渡せば 期限の切れた 雪化粧

0118・金・
 今週、話題になったのが首都高速の老朽化。あちらこちらが崩壊寸前、ガタガタであるらしい。この修復に1兆円がかかるとか。そんな予算はありません。どこからか聞こえてくるセリフだが、それはないだろう。安くはない通行料金を天文学的数字のドライバーたちが支払っていたはず。マンションだったら、その一部は建て替えの準備金として当然のようにプールされている。首都高速などの高速道路がどの省庁の担当になるのかは知らないが、その関係者は算数ができないと考えていいだろう。そもそも、自動車の取得税や重量税、ガソリン税からも首都高速の管理費を捻出できなかったのだろうか。様々な理由や口実で取られている税金。どこか、姿の見えない窃盗団がいるのか、もしくは猛烈なる浪費集団が湯水のように使い込んでいるような気がしてならない。こんな、ガタガタ道の東京では、オリンピックは無理じゃなかろか。
 ほにゃらか国家の人民解放軍に日本との戦争を準備せよ、という指示が下った、というようなニュースが聞こえてきた。また、ほにゃらか国の国内では、対日戦争をテーマにした特集テレビ番組が流され、軍事的緊張感を煽るような空気が漂っているとか。現実に、南方の小さな島々周辺では、連日のようにほにゃらか国から領海や領空を侵犯され、海保や航空自衛隊が対応して一触即発の状態にある。とはいえ、これがほにゃらか国全体の顔であるようには思えない。ほにゃらか国家の独裁政府の最大の敵はアメリカでもなければ日本でもない。それは13億とも、15億ともカウントされるほにゃらか国の人民の意志であるのだ。フランス革命は民衆によって成し遂げられた。独裁者は民衆によって裁かれる。ボクらはチャウセスクの死をまだ忘れてはいない。北の国においても、指導部の本当の敵はアメリカでも日本でもなく、民衆なのである。ほにゃらか国家の人民解放軍のニュースと同時に、ほにゃらか国の首都の深刻な大気汚染のニュースが届いた。この大気汚染、首都だけではなく、ほにゃらか国の各都市でトータル8600人の死亡が確認されている。こうした現実と平行して、国内の貧富の差は増大して、民衆の指導部への不満は加速度的に膨張しつつある、と考えるのが妥当である。仮想敵国日本との戦争が、民衆のガス抜きにどれだけ貢献するのかは不明だが、ほにゃらか国の本音と面子(めんつ)の双方を天秤にかけながら、あの貧しくて金満家の国家のパフォーマンスをじっくりと観察した方がいい。
 誰かがいっていた。テレビのアナウンサーが雪道で転倒して骨折、腕を吊って出演していたと。雪のニュースとなると、滑って転ぶ通勤人がカメラで狙われて、いい鴨(かも)にされているので、たまにはテレビ関係者が犠牲者の代表としてテレビ出演するのも悪くはないだろう。
 透析からの帰り道、鏡のようにつるつるになった道路を、抜き足差し足で戻ると、蒸し海老の握り寿司を肴に、極上の日本酒をちびりちびりとやる。お耳の友は桂ざこば師匠の『堀川』。ざこば師匠のこの根多(ねた)、何度聴いても爆笑。腹を抱えて笑ってしまう。米朝一門で、今いちばん乗っているのが、この師匠と桂南光ではないだろうか。やっぱり笑える落語がいい。もっともっと笑わせていただきたいのだ。笑えば人間、たちまち元気になってくる。
▲ 転倒の 撮影カメラ 転倒し

◇ バーチャル東海道五十三次コース保土ヶ谷を通過しました。
次は戸塚。あと16,379歩です。現在の歩数、66,021歩。2周目挑戦中!

0119・土・
 ラジオ三昧の土曜日である。朝からNHKの「ラジオ文芸館」がかかっている。今朝は山本周五郎作品。再放送だが、まるで覚えていなかったのは、作品の展開に納得がいかなかったため。このままでは、登場人物のすべてが武士道の犠牲者として生きていかねばならない。ボクのような合理主義者は、とても武士にはなれないだろう。
 ゆっくりとコーヒーを飲んでいたら、NHKではラジオ寄席の「真打競演」が始まった。三味線漫談は柳家紫文(やなぎやしもん)。この根多(ねた)、この前の土曜日、TBSラジオの「爛漫寄席」で聴いたばかりじゃん。放送局も芸人も、ちったぁ気を使って、芸人や芸の寿命が長くなるような配慮をしたらどうなのさ、とか思いながら聴いていると、同じ根多なのに、落ちが違う。さすがは柳家紫文。感心していたら、後半の根多(ねた)は展開も落ちもまるっきり同じ。長谷川平蔵が大岡越前の守(かみ)になったところも同じ。近頃、ラジオ寄席は貴重な存在。放送局も芸人も、ヘビーリスナーのいることをお忘れなく。
 集中してパソコンデスクに向かっていたので、TBSラジオの「パカパカ行進曲」はラストだけを聴く。番組が終わると、ニュースは訃報を伝えている。ほんの2時間前、あの大鵬がお亡くなりになったのだ。享年72歳が横綱経験者として長命だったのか、そうでなかったのかは不明だが、お元気にされているものとばかり思っていたので驚きである。巨人・大鵬・玉子焼き。柏鵬(はくほう)時代。いろいろと名言を残したが、大鵬と柏戸の名場面には手に汗を握ったものだった。柏戸関(かしわどぜき)は横綱として、永田町小学校でデモンストレーションをしてくださったことがある。そのとき、クラス代表でボクも当たり稽古をする権利を与えられたのだが、ボクはお供の若手力士に胸を借りただけだった。それでも、鋼鉄の壁のように、押しても引いてもビクともしなかったのを覚えている。そのとき、ボクは力士の強さをリアルに感じて驚嘆したものだった。大鵬はあまりに強くて、あまり好きにはなれなかった。大鵬時代、相撲人気は低迷したのではなかったろうか。ちなみに、ボクが好きだったのは初代の若乃花と貴乃花。それに、ウルフ千代の富士である。
 夜はJ-WAVEの「浅田二郎ライブラリー」。不思議な生き物、シエの物語。コインロッカーから生まれてきた女の子、スーちゃんの悲しみを、伝説の生き物が食べてくれる。彼女の涙や愚痴を最後のご馳走に、シエは5千年の寿命に終止符を打つのである。頭が麒麟で足が牛、尻尾が虎で鱗に覆われたシエの鳴き声は小型犬のもの。この録音のアレンジがいい。幸せになろうとしているスーちゃんの目の前で、魅惑的な伝説の生き物、シエは煙となって、満開の桜の花びらの中へ吸い込まれていく。その命のいじらしさに、ボクは思わず涙が出そうになる。この番組、J-WAVEのセンスが光っていて、聴く度にボクははまっていく。音は限りなくイメージを広げてくれるのだ。
 22時を過ぎると、コボちゃんにシングルモルトウィスキーの水割りを作ってもらい、ラジオの前に座る。ラジオ第二では「朗読の時間」再放送、「特集・村上春樹を読む」の総集編が始まるのだ。失明して濫読が許されなくなってからのボクは、かなり偏向した読み手になっている。そういう理由で村上春樹の作品に触れることなく生きてきたのだが、この「朗読の時間」で村上春樹の作品に触れることができた。ボクはこの人のユーモアが好きである。エッセイ『遠い太鼓』、まだまだ続いて欲しい。
▲ 日の光 雀コーラス 春の歌

0120・日・大寒・
 日曜日の朝いちばんは、文化放送で志の輔(しのすけ)ラジオ「落語でデート」。今朝のデートのお相手は女優の武田梨奈さん。空手2段の腕前で、蹴りで野球のバットをへし折るというからこわい。映画の主演女優に選ばれているのだが、もっぱら映画はアクション映画であるという。真っ直ぐで元気のいい21歳だが、志の輔(しのすけ)師匠の話術で、ただの面白い女の子にされている。落語は十代目、つまり先代の桂文治(かつらぶんじ)師匠による『ふたり車』(ふたりぐるま)。1976年の録音であるが、お馴染みの根多(ねた)である。こうやって先代のお声を聴くと、当代の文治師匠に、ついつい過大な期待をしてしまう。先週の当代林家三平の
「襲名って、本当に名前が襲ってくるんです」
という言葉を思い出してしまう。
 朝の早い時間に散歩に出る。凍結した雪道を避けて歩いていくと、
「ドラマを撮影していますので…」
と声がかかる。この付近では、やたらとトレンディードラマの撮影があって、うるさくてたまらない。テレビとかドラマという言葉が黄門様の印籠(いんろう)にでもなると思っているらしいが、冗談ではない。テレビとは100パーセント関係のない暮らしを送っているボクらにとっては、まるで心の動かない言葉。テレビだかドラマだか知らないが、朝っぱらから平和な暮らしの邪魔をしないでくれたまえ。
 この時間に公園にいくと、ワンちゃんの仲良しグループが集まっている。コーギーのメイちゃんや、アメリカンコッカースパニエルのイギ君など、アルルを見つけて歩み寄ってくる。もう、アルルは大喜び。シベリアンハスキーの銀君は、つい最近、ご主人と犬橇(いぬぞり)の訓練を受けたばかり。
「銀君、おりこうだったね」
と撫でてあげると、銀君、ボクの前でオスワリをしてくれる。すると誰かが
「あっ。銀君のオスワリ、初めて見た」
といっている。犬を好きだと思う気持ちが、こんなにもストレートに犬の心に届いていく。犬とは不思議な生き物である。
 住宅街のあちらこちらでシャベルの響き。日曜日のお父さんたちが、除雪に汗をかいているのだ。
 凍った雪道では、ワンちゃんを散歩させている人間同士は道を譲り合う。お互い丁寧に挨拶をするから、いつも以上にコミュニケーションがスムース。ワンちゃん談義も弾む。 世田谷線の山下駅前商店街をいくと、いつもの花壇には、まだ雪が残っていて、寒々しい。それでも、日差しを浴びて雀たちが楽しそうに歌っていた。
 午後からキッド・アイラック・アート・ホールへ。青木裕子の世界2013『平家物語』朗読コンサートがあるのだ。今や、軽井沢朗読館と軽井沢町立図書館の館長を兼任する朗読家、青木裕子さんの語りに、明石現さんの十一弦ギターがからむ、という仕掛け。以前から楽しみにしていた企画である。
 ホールは超満員。普段は解放されない二階席まで鈴なりになっている。ボクはこのホールのオーナーであり、無言館の館主である窪島誠一郎先生と並んでオーディエンス。
 青木さんの古文の朗読はボクにとっては初体験。たとえ言葉の意味のすべてを理解はできなくても、美しい声とリズムは、物語のエッセンスを伝えてくれる。高校時代、古文の授業で読破した平家物語ではあるが、活字が何も伝えてくれなかったことを今更ながらに確認できた。もしも朗読家、青木裕子の語りで平家物語を学んでいたら、もっと楽しい授業いなったに違いない。
 語りが終わり、窪島先生とならんで、大きな拍手を送る。十一弦ギターも、音響も見事だった。
 窪島先生のエスコートで地下への階段を降りていく。ブックカフェ槐多で打ち上げ。素晴らしいメンバーとの楽しい飲み会である。今夜の窪島先生はえらくゴキゲンで、楽しそうにボクをいじめてくれる。ボクは窪島先生にいじめられると、嬉しくてたまらないのだ。
 この平家物語の企画、これからも開催されるので、ぜひ体験なさることをお勧めしたい。
▲ 雪道や シャベルとパパの 日曜日





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