全盲のイラストレーター ◆エム ナマエ◆ の超個人的十七文字ブログです
ボクは中途失明した画家。週に三度の人工透析で生かされています。なのに、今でも 画家で作家。ボクは思います。人生、何があっても大丈夫。
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いつも日記をつけてます。失明したら頭脳がノート。
だから、記憶力のトレーニングのためにも、前日の出来事を振り返り、コツコツ日記をつけてます。



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2011年3月7日~13日
☆ 漢字や熟語、固有名詞には振り仮名がしてありますが、漢字の難易度とは関係がありません。これらの振り仮名は視覚障害者のための音声モニターを容易にするためのものです。

0307・月・
 5時前から起きている。朝いちばんで昨日の続き、連載絵本のテキストを練る。ひとつの世界への通路ができると、そこへ遊びにいくのは楽しい。これだから、この仕事はやめられない。
 ただひとつ、大問題が発生した。それはパソコンの外部スピーカーが沈黙してしまったことだ。パソコン内臓の小型スピーカーでモニターをするのだが、これが心細い。だから、ラジオも音楽も大きな音ではかけられず、蚊の鳴くように歌ってる。
 ラジオでは風力発電の話題。日本の発電量は世界第18位で中国の75分の1しかないという。世界1が中国、2番目が米国であるのだが、仕方ないよ。だって日本は狭いもの。とはいえ、専門家によれば、日本は原子力に寄り過ぎているらしい。どうせまた、何らかの利権があるのだろう。本気になれば、北海道だけで、日本全体の電力を風力発電で賄えるらしいのだが。
 寒い。予想最高気温が4度で雨が降っているので、間違いなく雪となるだろう。ラジオでも、各地での積雪を予報しているが、まさかの寒さ、気象予報士も予報できなかった春の雪である。
 10時からのラジオタイムは先週で『浮雲』の朗読が終わってしまったから、つまらない。今週からは別の作品であるが、興味がわかず、消してしまう。ただ、これからも「お話出てこい」は楽しみにしている。今朝はアンデルセンの古典。いったいいつの録音なのだろう。サノアサオのおじさんの声が、やけに若いのだ。なんてったって、この役者さん、ちょっと前の水戸黄門さんですから。
 寒いので、ミミは羽根布団に沈んだまんま。アルルもキジバトポッポも、それぞれの持ち場で静かにしている。ボクは小さなモニター音のおかげで、静かな環境で仕事をしている。たまにはいいだろう。
 外はますます寒い。駐車場の隅に、うっすらと雪が積もっているらしい。でも、大雪にならなくてよかった。
 いつもの透析。気になったニュースがひとつ。中国地方で農家の土蔵が崩壊した。高さ5メートル、築60年。ただし、原因不明。近所の目撃によると、超低空を先端の尖った航空機が聞いたことのない爆音をたてて飛び去ったという。真相は現在調査中。中国地方というから、おそらくは岩国基地あたりの米国空軍の無許可演習であろう。沖縄に対する差別発言といい、アメリカ、日本人を人間とは認識していない。まあね。アメリカという国家にとって、それ以外の存在は、彼らが利用するためにあるのだ。
 21時5分からは「真打競演」。コント、ヤマグチ君とタケダ君が面白い。ベテランのコンビであるが、ますます面白くなっているのではなかろうか。病院という環境の中にあって、このおかしさは拷問である。まあ、ガマンして笑うのも面白いといえば面白い。
 透析からの帰り道、コボちゃんがガソリンの高さを嘆いていた。みんな、登記マネーがいけないんだ。資本主義、図に乗っていると、崩壊するぞ。
 帰宅すると、アルルとミミが甘える。アルルは雨降りの日は留守番と決められているのだ。
▲ 階段で猫が吠えてる春の雪
▲ 予報官けけけと笑う春の雪
▲ 手渡しの冷たい手紙春の雪

0308・火・
 5時に起きて活動開始。毎朝のボクのガソリンはオロナミンC。糖分とビタミンCと炭酸ガスの供給である。中部盲導犬協会での訓練時代から始めた、この朝の習慣、もう19年間も続いている。最近仕入れた情報によれば、炭酸水はいろいろと効果があるらしい。確かにオロナミンCはボクを活発にしてくれているのだ。
 ラジオからの情報で、耳に残った言葉はスマートシティー。このスマートはスマートフォンやスマートビルのスマートに該当する。未来都市の発送は高度にシステム化された都市構造である。これは、そのまま海外へ売り込み可能。つまり、街ごとを輸出するのである。太陽光発電、風力発電、燃料電池と蓄電池との融合によるエネルギー革命や上下水道のシステムは我が国のお家芸ともいえる。海外からの期待も大きいとのこと。こうした新しい産業が日本を元気にしてくれるだろう。
 TBSラジオニュース「スタンバイ」は一日のエンジンスタートとなっている。「日本全国8時です」は詩人の荒川先生が松尾芭蕉を語る。芭蕉の生涯983句が一冊の本になったとかで、その代表的な俳句を紹介していて勉強になる。ボクのインチキ俳句は今も底なし沼で溺れてはいるが。
 コーヒータイムは百恵ちゃんのアーモンドチョコレート。ボクやコボちゃんにとって、このグリコのアーモンドチョコレートはひとつの時代の記憶であり、この度の復活を心から祝福しているのだ。いやあ、そうなんです。このアーモンドチョコレート、ずっと製造中止で、入手不可能だったのです。みんな、山口百恵ちゃんは覚えていますよね?
 本日の「面白生物学」も生き物と時間の関係。我々高温動物は高速生物。速く動くために、いつもエンジンが温められている。そのための燃料消費は大きい。そして、高温動物は高時間動物でもある。高度に発達した人間社会は地球環境を想像を絶するスピードで破壊している。そろそろ、ゆっくりと手に入れた価値に注目すべき時期にきている。今朝もモトカワ先生の論、冴えに冴えている。
 話は脱線するが、以前のボクは東京大学名誉教授、地球物理学の竹内均(たけうちひとし)先生に注目していた。竹内先生ほど地球についてのいろいろを教えてくださった先生はいない。そして今、モトカワ先生が生物というカテゴリーに意識の光を照射し、ボクらに「生きる」ことを教えてくれている。
 夜は原稿執筆に疲れて、北海道の味付け烏賊を肴にビール。BGMはもちろん落語でリラックス。酔っ払って早く眠る。
▲ 初鳴きと耳を澄ませばラジオかな

0309・水・
 5時前から活動開始。日本点字図書館の寄付依頼の原稿『希望岬へ一直線』を仕上げ、送信する。
 コーヒータイム。BGMはラジオニュースの「スタンバイ」。「日本全国8時です」はお天気おじさんの森田君。昨日のスマートシティー構想の話題と関係があるかないかは知らないが、エネルギー革命について語っている。燃料電池のトータルなシステム化については目新しくもないのだが、腐敗した有機物から発生するメタンから水素を抽出する点に注目。地球温暖化により、台風の発生地点が東へ移動している。結果として、日本列島を巨大台風が上陸するようになるらしい。それを防ぐためにも、二酸化炭素やメタンの排出を抑制する必要があるのだ。微生物などの活動、つまり石油からはニュートラルなシステムによる水素ガスをエネルギーとして利用するこの計画、早期実現を祈る。
11時45分、東北宮城沖(みやぎおき)で大きな地震。津波注意報よりも、驚きは長周期地震が東京を襲ったこと。TBSラジオのスタジオも揺れているらしく、悠里(ゆうり)さんやケンケンが焦っている。ボクの足元も、ゆうらりゆうらりと揺れて、気持ちは悪い。地面が揺れれば不安がつのるし、どうもいけない。心配されている宮城沖地震(みやぎおきじしん)ではなかったので、大きな被害はなかったが、地球上でやたら地震が暴れている。やはり地球は活動期に入っているのか。
 昼間は暖かい。窓を開いて仕事をする。この季節は温度調節が難しい。夜は寒い。用心して厚着で出る。
 いつもの透析はずっとFM。NHKFMでリップスライムの『センスオブワンダー』がかかっていた。これはいい。FM-J-WAVEのミックスマシーン、ピストンさん、やっぱり黙ってDJをやっていただきたい。ピストンさん、悪声なのですよ。今夜はずっとFMを聴く。クラシックはベートーベンの荘厳ミサ曲。古楽器による演奏なので、これは面白い。ジャムザワールドでは離婚遺伝子334の話題。離婚までDNAのせいにされたらたまらない。理由は他にあるでしょう。
 帰宅してコボちゃんがパソコンの外部スピーカーの接続を目視確認してくれるが、問題箇所は見つからず。こうなれば、ラビットに相談するしかないだろう。
 久しぶり、ふたりで赤ワインを飲む。デキャンター代わりのビールグラスからワインを注ぐ。フランスチーズを出したら、アルルが飛んでくる。自分はもらえないと理解すると、ベッドに戻って大きな溜息。これはかなりの「これ見よがし」で笑う。ボクがアルルにいう。
「ここは人と犬が超えられない地平線なんだよ」
▲ 鼻風邪や光の春に惑わされ

0310・木・東京大空襲の日・
 40分間だけの朝寝坊だが、いつもの運勢占いを逃した。こういうつまらないことが一日のリズムに影響することがある。とはいえ、今朝も目覚められたことに感謝。今日も一日を生きていける。
 マキコさんの作品を読み、感想をメールする。犬好き必読書と思い、電話で意見交換をする。
 ミミを別宅に連れていく。廊下の冷たい空気と、階段から響いてくる知らない足音に、ミミはすぐに別宅に飛び込む。これでボクは部屋を自由に移動しながらの仕事が可能となる。
 部屋のしきりを開放し、サンルームの障子も開け放す。気温は上がっていないのだが、ガラス窓からの日差しは暖かく、アトリエ全体を暖めるのに、エアコンひとつで充分。
 トイレにラジオを連れ込む。昨日の「お話出てこい」を中途半端に聴いていたので、ちゃんとストーリーに注意して、改めて聴く。で、改めて聴いたが、すごく当たり前のストーリーで、それなりの失望。ただし、この当たり前が児童出版や放送世界では軽視できない。ボクらの当たり前と、幼児の当たり前は同じではないのだ。
 部屋を自由に移動できるので、アルルがボクのベッドを占領している。パソコン内臓スピーカーでの音声モニターだと疲れる。やたらと眠く、たまらない。ラミットに相談すればよいのだが、それも面倒臭い。
 夕方、疲れたコボちゃんとのティータイム。ボクの膝にはデブネコのミミ。さっきは騙されて(だまされて)別宅に押し込まれたことなどすっかり忘れ、ボクを信じ切って甘えている。デブネコだから、なんだか毛むくじゃらの赤ん坊を抱えてるみたいで、悪い気はしない。どうして猫はこうも甘え上手なのだろうか。
 19時のニュースでコント55号の坂上二郎氏が逝去されたことを知る。誰もが夢中になれたコント55号は時代の象徴であった。相棒のキンちゃんのコメントが泣かす。最後の別れのとき、ジロさんはキンちゃんに握手を求めたそうである。
 夜も原稿執筆。最近はあまりラジオを聞きたくない。特に政治関係のニュースに嫌気。政局の話題ばかりで、中身のある議論が聞こえてこない。与党も野党も本来の仕事を忘れている。と、こう感じるのは報道のあり方も影響している。本当の声を聞くためにはインターネットだけが有効なのか。でも、その時間があれば、他にやりたいこと、やるべきことがいくらでもある。ボクはボク個人に与えられた使命を果たすだけ。
 仕事が終わると空腹。22時のNHKジャーナルでもジロさんの訃報を流していた。ジロさん、歌がうまかったよなあ。
 あまりラジオを聞きたくなく、『墨東奇譚』をかけて、羽根布団は頭からかけて、丸くなる。
▲ 土手の春命が俺を生きていく

0311・金・
 5時に起きて活動開始。今朝の運勢占いがやけに気になる。ところが、出たのは凶。この占いでいうところの「停滞」であった。なんとなく嫌な感じ。
 コーヒータイムにハニートーストと百恵ちゃんのアーモンドチョコレートが切れていて、食べられないのが残念。
 10時からはNHKラジオ第二タイム。「お話出てこい」は『春のお客様』というタイトルだったが、これは名作、あまんきみこ先生の『空色のタクシー』からのエピソードであると思う。この挿絵、ボクの尊敬する北田卓史先生によるもので、今も網膜に焼き付いている。北田先生がお亡くなりになってから久しい。ボクもあの優れた絵本画家の集い『童画集団」に所属していたのだ。そのメンバーのほとんどはあの世に引っ越していってしまった。
 カルチャーラジオは「永井荷風再考」。今朝のテーマは「荷風と戦争」。表面的には戯者(げさくしゃ)を装っていた作家の内心は『断腸亭日乗』(だんちょうていにちじょう)に綴られている。その作家の内面を追跡する。驚くのは、永井荷風ほどの人物でも、若い書生風の人間たちの詐欺の対象となったこと。たとえば、手塚先生が騙されて(だまされて)虫プロ(むしぷろ)を奪われたように、作家は騙される(だまされる)のが得意なのだ。まあ、売れっ子は金の匂いがするから、カネスキムシが集まってくる。ボクもちょっとは経験しました。あはは。
 『浮雲』が終わって残念だが、あれから初めて朗読の時間に傾聴。知っている作品ではあるが、連続で聴けば、また面白い。
 おえかきデスクへ移動するのだが、その前にデブネコのミミを別宅に連れていかねばならない。アトリエの玄関を開き、踊り場向かいの別宅の玄関を開く。珍しく我が家の長老猫、ナンナンがボクに甘えてか、足元にきて、ボクを見上げて訴えるように、せわしく鳴いている。これは珍しいこと。よほど寂しいのかと思い、しばらくナンナンと話をした。
 ミミを別宅に連れていってから、おえかきデスクに戻り、お気に入りのキャラクター、エンジェルピッグを描く。
 さて、次はゆめぞうのイラストレーション。カットの練習を始めたら、足元が細かく揺れている。嫌な直感。すぐに立ち上がり、ポケットにいつも入れてあるポケットラジオをオンにしながら、アルルを呼ぶ。いつもボクは分厚い室内履きを履いている。防寒で羊の毛皮の丈夫な製品。それで素早く蟹歩き。玄関へ急いだ。鍵を開き、鉄の玄関ドアを開く。その間にも、揺れは大きくなっている。間違いない。恐れていた宮城沖地震の本番がやってきたのだ。この揺れ方は東北方面からやってきている。アルルを従え、階段の踊り場に飛び出る。ミシミシとコンクリートの階段が悲鳴をあげている。鉄の扉がきしんでいる。ボクはしゃがみながら扉をストッパーにかけて抑えた。でも、できたのはそこまで。扉や柱にしがみついていないと不安なほど、揺れは大きく、また複雑。こんな地震は経験したことがない。
 ボクは東京生まれである。だから、東京育ちの祖母から、関東大震災の恐ろしさを教え込まれて育ってきた人間である。いよいよ、その災害本番に遭遇している。恐怖感がボクを支配しようとした瞬間、ボクはつぶやいていた。
「神様」
 なんだ。ボクはブディストではなく、アマテラスオオミノカミであったのだ。
 あまりに激しい揺れに、アルルはパニック。階下へ駆け下りていく。カウベルが乾いた音で鳴っていた。
 揺れが落ち着くと、ボクはアルルを呼んだ。すると、しばらくしてアルルは階段をあがってきた。室内へ戻ると、ファービー人形が叫びをあげている。テレビの上の、限定制作500体の巨大ゴジラが落ちている。CDラックからはCDとケースが産卵。けれども、立ち上げたままのパソコンは元気にしていた。キジバトポッポの安否を確かめる。あの揺れだったのに、鳥篭は落ちてはいなかった。その間、耳はラジオの情報に集中。14時46分、東北の沖合いを震源に地震発生。最大震度7、という数字が聞こえた。そうだろう。さっきの東京での揺れだって、震度6はあったろう。そう思った途端、またまた地震。
 これも大きい。玄関ドアはストッパーをかけたまんまだから、そのまま外に飛び出す。建物が歪んだら、逃げられなくなるからだ。アルルも飛び出し、そのまま戻ってこない。地震が落ち着いたのに、戻ってこない。すると、隣の階段のご婦人がアルルを連れてきてくれた。
 ラジオが大津波警報を叫んでいる。東日本がパニックになっていることを実感。なんとか、ボクは自分のパニックを抑えている。
 すると、コボちゃんから電話。まず、安全を伝えた。何度か電話が鳴るが、取り上げると不通になっている。こちらからかけると、雑音の彼方から
「ただ今電話が込み合っています」
の声だけが繰り返されていた。
 コボちゃんが帰宅して、絶叫したまんまのファービー人形を黙らせてくれた。ああ、うるさかった。
 病院までクオリスでいくが、エレベーターは停止している。階段をあがっていくと、透析質は緊急体制。着替えなくてもいいといわれたが、ボクはオーバーオールを脱げば、下はパジャマ。地震情報に傾聴しながら透析を受けた。
 マグニチュードは7.9から8.8へ修正される。ボクの知る限り、スマトラ沖地震に次いで二番目の巨大地震である。こんな地震、誰が予想できただろう。『日本沈没』にも、こんな巨大地震は登場しなかったぞ。それ以後の被害のことは誰でもご存知である。
 国際ジャーナリストのオイケンからのメールによると、地震の前、飼い犬がそわそわとして、鳴いていたという。そういえば、地震の前、我が家の長老猫のナンナンも、いつもとは違う鳴き方で、ボクに何かを訴えていた。もしかしたら、地震がくると教えていたのかもしれない。その後、似たような話を街でラジオで聞くことになる。
 コボちゃんが食べ物がないと嘆いている。甲州街道も赤堤通りも帰宅難民でごったがえし、コンビニは既にからっぽになっていた。
 コボちゃんがいて、アルルとミミがいて、エアコンが動いていて、食べ物と赤ワインがある。そういうことを、これほど幸せと思うこともない。ただ、船酔いしたように、ずっと足元が揺れている。ベッドに潜るが、ベッドも揺れている。
 うとうとすると、緊急地震情報。もう、パソコンやCDに潰されても、起きたくないよお、と思う。
▲ なにゆえに人を呑むのか春の海
▲ 瞬きて(またたきて)命を呑んだ春の海
▲ 啓蟄や島も浮かれて踊ってる

0312・土・
 未明から緊急地震情報でろくろく眠ってはおられない。東北、新潟、長野、神奈川、千葉と、震源も次々に移り変わる。とても眠ってはいられない。ところが、あまりに広範囲な震源だったため、気象庁のコンピュータも混乱しているらしく、情報は正確さに欠けている。そういうわけで、途中からは緊急地震情報を無視して眠ることにした。
 それにしても、昨日から船酔いというか、地震酔いの状態。いつもどこかが揺れている。
 TBSラジオ、永六輔の土曜ワイドでは永さんが薀蓄を披露。昨日、帰宅難民のため、日本橋三越は1Fを解放。地下鉄銀座線が復旧するまで、お客さんを待機させたという。この伝統は江戸時代から。地下道に飾ってある絵巻物の通り、三越は江戸いちばんの誇り高き老舗なのである。
 一度は起きて活動開始するが、睡眠不足でベッドに戻る。いくつか心配してくれての電話をもらうが、生返事で切ってしまい、失礼をする。
 午後から目覚め、パソコンに向かう。こういうときこそ、平常心と日常が大切。近所の道路や建物の安全確認のためにも、豪徳寺まで歩く。気がかりは暗渠の上の道路や遊歩道。途中、古くなった看板を修理しているビルがあった。
 風は冷たいが、午後の日差しが暖かい。花壇に座り、モスのつくねライスバーガーとクラムチャウダーでおやつ。アルルは、目の前に座った小さな女の子から声をかけられている。
 コボちゃんが、我が家の家具、ゲンベルトー・スズキ氏によるものが地震でもびくともしないデザインであることを伝える。他の家具は、ガラス棚が移動して、飾り物などが破壊され、その中には原爆画家の丸木俊(まるきとし)さんの手によるぐい飲みもあって、残念。ただ、丸木俊(まるきとし)さんの焼き物はまだ在庫があるので、安堵する。
 さて、ゲンベルトー・スズキさんの家具と建築の話題に戻るが、ゲンさんの建物は阪神大震災のときも無傷。収納されていた陶器の食器も無事で、人々が集まり、食事を楽しんだという。ゲンさんの建物は現地で「ノアの箱舟」といわれたそうである。いつかボクが美術館を建てるときは、もちろんゲンさんにお願いするのである。
 今回の地震の命名、マスコミではどうやら東北関東大震災に定着したらしい。関東大震災と混同し易い印象もあるが、覚え易い名称ではある。
 おえかきデスクにしがみつき、下絵に集中する。こんなときだから仕事を大切にするべき。平常心で日常を。
 でも、耳はずっとNHKラジオ。ボクがバーチャル奥の細道を歩いてきた、それら地名が被害地としてアナウンスされている。なんともいえない気持ちがする。
 ラジオはひたすら地震情報。今夜は「ラジオ文芸館」もあきらめる。友人知人からメールあれこれ。貴重な情報もガセネタも、ここは個人のリテラシー能力が試される。以下は原発関係など、今回の地震に関する友人へのボクのメール。中途半端な知識をひけらかしている。とにかく、個人個人が目覚めて、ここはヒューマンネットワークで、地域で、助け合って生きていくしかない。
 チャイナシンドロームという映画があって、そのテーマがメルトダウン。つまり、炉心溶融です。炉心溶融が起きると、核燃料自らを熱で溶解し、周囲を溶解し、地面に潜り込んでいく。地球の中心へ落ち込んでいく。核分裂に必要な燃料がなくなるまで、それは終わらない。その最初が、米国のスリーマイルズ島の原発事故。その次がチェルノブイリ。そして今回の福島原発。まだ、メルトダウンとされてはいないが、実情は深刻。緊急停止させた核燃料棒が制御棒とどんな関係にあり、どのような状態にあるのか、それが心配。臨界、つまり、連鎖的核反応がおさまってくれれば事態は沈静化するんだけれど、とにかく、今は冷やすだけで精一杯の状況なのです。福島原発では、もっとも恐れられていた事態が発生した。こういうわけです。自民党と御用役者と役人どもがでっちあげた安全神話がこれで本当に崩れた。その尻拭いをしている民主党政権、特に菅直人と、それを隣で支えている親友ケンちゃんの健闘を心から祈り、見守っているところです。こういう事態が、いつか必ずくる。それが分かっているから原発を都心に設置するはずがない。あれが都心で起きれば、どれだけの人間が避難しなければならないか。想像するだけで阿鼻叫喚(あびきょうかん)の地獄絵図です。ボクがいちばん恐れていた南海沖、東海沖、相模沖の連鎖的地殻変動ってやつがあったんだけれど、日聞いて驚いたのは、今回の地震のレベルはそれを超えるものであったんだって。具体的にいえば、今回の断層破壊は500キロに及ぶ。スマトラ沖の巨大地震がM9.0で、断層破壊は千キロに及んだ。ボクの記憶によれば、今回の地震は、それに次ぐ規模です。今後、何が起きても不思議ではない。列島の基盤が揺らいでいるので、どこでどんな地殻変動があるか、誰も予測できない。ポケットラジオと電池の準備は必ず。これが日本の宿命なんです。拝。
 今夜も足元が揺れていて、ボクも揺れていて、船酔い気分。日本列島が揺れている。
 こんなときだから、コボちゃんがボクの大好物を料理してくれる。赤ワインで和牛。こんな平和で幸せな食事を、ボクらは許されていいのだろうか。
 ひとりでも多く救われますよう、祈りはするが、ひとつの町の1万人の住民と連絡がつかないという、にわかには信じられないような情報もある。今夜は心が疲れた。すべてはまた明日から。
▲ 手を合わす奥の細道助かれと

0313・日・
 5時に目覚めたのだが、またダウン。この騒ぎで放送中止だろうと思っていた志の輔ラジオ『落語でデート』をやっているが、ラジオをかけっ放しにして眠ってしまう。勿体無いことをした。
 終日ラジオを流している。やはり情報はNHK。東日本大震災の真相が明らかになるにしたがって戦慄と恐怖と悲しみと祈りの気持ちが強くなっていく。やがて、この巨大地震がM9であることを気象庁が発表。驚愕すべき数字である。スマトラ沖地震につぐ巨大地震であろうとは思っていたが、それに匹敵する超巨大地震であったのだ。
 1960年にチリ沖地震津波という大災害があったが、あのときのエネルギーがM9.5で観測史上最大の地震。今回の東日本大震災のM9は記録上5番目であるという。幅200キロ、長さ500キロ、時間にして5分間にわたる断層破壊。そのような地殻変動が日本列島の傍らで発生したのだ。これは公や民間の誰もが想像しなかった巨大災害といってよいのだろう。記録では平安時代に、このような災害の記録があるという話であるが、それが事実とすれば、これは千年に一度の災厄であったのだ。
 地球観測衛星の画像によれば、日本列島は4メートル移動し、海岸線の地形は変わっていた。そこに生身の人間が、魚たちが巻き込まれたのだ。
 救助された人々のインタビューを耳にしたNHK仙台のアナウンサーが泣いている。ボクはNHKアナウンサーが本番中に泣くのを初めて聞いた。我が国土、我が故郷、我が友を思う気持ちは誰でも同じである。地久で発生する大災厄を、いつも自分のこととして受け止めているが、まさか本当にこの日本で起きるとは。それも、ボクの生きている間に。思わず合掌をする。
 次々に心配してくれるメールをいただく。こういうときこそ、人との連帯と信頼である。
 ボクもコボちゃんもやるべき仕事を抱えているのだが、どうしてもその気になれない。こうして、ここに一緒にいられ、足元にアルル、膝にミミ、鳥篭にポッポのいることを、何よりの幸せと思う。
 気を取り直して、やなせたかし架空追悼コメントを執筆。やなせ先生がいない世界なんてボクには考えられない。でも、やなせ先生のリクエストだから書く。これは『詩とファンタジー』の架空やなせたかし追悼特集号に掲載されることになっている。そのテキストを送信。
 おえかきデスクに座り、地震で中断された下絵の続き。ホワイトデイの手紙をしたためる。へたくそでも、一文字一文字の手書きである。
 執筆やおえかきに集中して、地震のことを忘れていたいが、福島原発のことも気がかり。菅直人をサポートしているケンちゃんにメールをしたら、奥様から返信あり。ケンちゃん、普及不眠でこの大災害と闘っている。心からケンちゃんの健闘を祈る。彼が菅直人をサポートしている間は、この政権は大丈夫。そう思えればと願っている。
▲ 海猫が飛び立つ津波太平洋



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